ごっとさんのブログ

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医学を支えるマウス

2017-03-18 10:23:56 | その他
現在は病気の解明や治療法を開発するうえで、実験動物としてのマウスが重要な役割を担っています。

マウス(ハツカネズミ)は体が小さく扱いやすい上に、体の臓器の役割や遺伝子がヒトと共通することも多いとされています。実験動物としてのマウスは、現在は遺伝子を改変して色々な病態の物を作り出しています。

こういった遺伝子を操作するという技術は、たぶん30年ほど前からだと思いますが、それ以前はどうやって安定な病態マウスを作っていたのか不思議な気がします。例えば免疫不全のヌードマウスというのは、かなり昔から存在していました。このマウスは胸腺が欠損することで、免疫機能が働かないのですが、なぜ体毛がなくなってしまうかはわかりません。

このヌードマウスの開発によって、ヒトのガン細胞の移植が可能となり、抗ガン剤の開発が非常に進歩したと言われています。

最近ではアルツハイマー病のモデルマウスは、脳にアミロイドタンパク質(APP)がたまり、ヒトと同じような症状が出るようになっています。このマウスは脳にたまる断片のもとになるAPPの遺伝子を、多数組み込むことによって作られています。

しかしAPPが過剰にたまりすぎ、早く死んでしまったり、APPの蓄積の仕方がヒトと若干異なっていたようです。このアルツハイマー病の薬は、アメリカ食品医薬品局に届けられているだけで200種以上あるようですが、脳の状態を戻す根本的な薬はまだないようです。

理化学研究所の研究グループは、薬の開発がうまくいかない原因の一つは、患者の状態を再現しきれていないマウスで実験しているためと考えています。この研究グループは、一部の患者で見つかっている遺伝子の変異を持つ新しいアルツハイマー病マウスを作成しました。このマウスを使った共同研究の申し込みが多数出ているようです。

別な理化学研究所の研究グループは、移植による拒絶反応が起こらないマウスを使って、ヒトの白血病の造血細胞を移植したマウスを作成しました。白血病を起こす遺伝子の異常は患者によって異なるため、様々な患者の病気を再現する白血病マウスを作ることで、患者ごとに適切な薬を選んだり、多くの患者に使える薬の探索などに役立つとしています。

このように色々な病態マウスは、現在の治療法や薬剤開発になくてはならないものなっていますが、この遺伝子操作の方法などについて次回に続けます。