ごっとさんのブログ

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ヒト臓器 動物から作る

2017-03-22 10:42:52 | 健康・医療
アメリカの研究チームは、ヒトのiPS細胞をブタの受精卵に入れて、ヒトの細胞が交じったキメラ状態の胎児を作成したと発表しました。

このブログでも2月の初めに、ラットで作成したマウスの膵臓を使ってマウスの治療に成功した話を書きました。こういった異種の動物によってiPS細胞やES細胞から臓器を作る試みは、ヒトについても始まっているようです。

ただ日本ではクローン技術規制法があり、ヒトの幹細胞を入れた受精卵を子宮に戻し子供を作ることは禁止されています。これはヒトのような意識や人格を持った動物が生まれかねないという、倫理的な問題からですが、このあたりはもう少し議論が必要な気もします。

今回の研究チームは、ブタの受精卵をある程度まで分裂が進んだ「胚盤胞」の状態まで成長させ、iPS細胞を注入しました。これを子宮に戻した1466個の内、186個が胎児まで成長したようです。やはり技術が進んだといっても、こういった非常に多数の実験をしないとしっかり検証できる結果は出ないのかもしれません。

このブタの妊娠3~4週後に調べると、67個の筋肉などでヒトの細胞が交じっているのを確認できました。しかしこの細胞数は、ブタの細胞10万個当たりに1個程度しかなく、成長すれば排除されてしまう可能性が高いようです。

こういった実験ではまだまだヒトキメラ動物を作るのは難しいようです。なおこのキメラ動物というのは、細胞の中に異なった遺伝子を持つ細胞が交じった状態で、2種の異なる種から交配で作る「雑種」とは根本的に異なっています。

雑種は異なった種の遺伝子が交じりあったもので、すべての細胞が同じ遺伝子となるわけです。こういた点からもキメラ動物の作製は、あまり倫理的な問題は出ないような気がしています。

現在iPS細胞などの研究は大きく進展していますが、例えば心筋細胞や肝細胞を作ることはできるのですが、心臓や肝臓を作ることはできていません。人間の臓器を作るという観点からは、まだ子宮内での成長が必要です。こういった点でブタが注目されているわけですが、ヒトと臓器の大きさが同じくらいとはいえ、妊娠期間の相違など難しい点が多いようです。

今回の実験も単にブタの胎児中にヒトの細胞が入ったというだけで、ヒトの細胞だけで作る臓器などとはまだかけ離れています。このあたりは日本の研究者もブタの発生と整合性を持たせるために、注入するヒト細胞の分化段階をいかに調整するかがポイントになるだろうとしています。

ヒトの臓器をブタに作らせるという、最初の一歩が成功したと言えそうです。