長期間埋め込み可能な硝子体を開発

眼球の中を満たす硝子体（しょうしたい）の代替ができる、長期間埋め込み可能な人口硝子体を開発したと発表しました。

これは東京大学と筑波大学の研究グループで、網膜剥離などの目の病気の手術に応用できるようです。硝子体は、目に入る光の情報を脳へ伝える網膜と接し、ゼリーのようなハイドロゲル状の組織で多くの水を含んでいます。

網膜剥離など網膜が関係する多くの目の病気の手術では、硝子体の代替材料が必要ですが、シリコンオイルなどこれまでの材料は生体適合性が低く長期間使えない上、術後に除去が必要でした。さらに患者は1週間程度入院してうつ伏せ姿勢を維持しなくてならず、術後管理の負担も大変だったようです。

研究グループは、新しい分子設計技術を駆使して、含水率の高い新しいタイプのハイドロゲル状組織を作ることに成功しました。ハイドロゲルは生体軟組織に似た組成を持っているため、医療材料として注目を集めているようです。

これは溶液状態で生体内に注入し、そこでゲル化するという性質を持っていますが、この反応が周辺組織に刺激を与えたり、周囲の水を吸い込んでふくらみ、周辺組織を圧迫するなどの問題を持っていました。

研究グループは、ゲルが作成されてから分解されるまでのすべての期間にわたり、膨潤圧が周辺組織に影響を及ぼさないレベルまで低減することに成功しました。また液状のままで眼内に注入し、内部において速やかに（10分以内）にゲル化させることにも成功しました。この短時間にゲル化するということで、患者の負担をほとんどなくすことができたようです。

ハイドロゲルは高分子と水からなる材料ですが、高分子は毒性を発現する可能性があるため、この濃度を極限まで低減し、1％以下というきわめて低い量でハイドロゲルとなることを見出しました。どういう高分子化は分かりませんがＰＥＧ（ポリエチレングリコール）関連物質のようです。

研究グループはこのハイドロゲル状組織を人工硝子体として、網膜剥離のウサギの目に注入する実験を行いました。その結果1年以上の長期間使用でき、副作用もないことを確認したとしています。この人工硝子体は自然に分解されて体外に排出されるため、術後の除去手術も不要となるようです。研究グループは網膜の病気の日帰り治療も将来できるようになると期待しています。

私も老化の一環のようですが、網膜にしわがよった状態になりかかっているようですので、簡単な治療法を大いに期待しています。