ごっとさんのブログ

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肺ガン抑制に新手法

2018-01-09 10:16:15 | 健康・医療
東京理科大学とがん研究会の研究チームが、ガン細胞の増殖を抑える新たな手法を動物実験で確認したと発表しました。

これは既存の抗ガン剤に耐性を持った肺ガンに対し、細胞内で物質を輸送するゴルジ体を壊す新しい手法で、胃ガンでも同様な効果を確認しており、新たな仕組みで幅広く使える分子標的薬が期待できるようです。

肺ガンは国内のガンによる死因のトップで毎年約7万人が亡くなっています。その内約8割を非小細胞ガンが占めており、このうち約4割の人は、遺伝子変異によって増殖をうながす刺激を受け取りやすくなった受容体がガン細胞の表面にあります。

その受容体の働きを邪魔する分子標的薬が有効とされてきましたが、使い続けると受容体に別な変異が生じ、1~2年で薬剤耐性になる問題がありました。

薬剤耐性の主な原因は、活性変異型遺伝子に新たに薬剤耐性変異が挿入されることですが、このダブル変異型に奏効する第三世代の薬剤が開発されましたが、残念ながらこの薬剤にも耐性が生じることが分かりました。

がん研がん化学療法センターはAMF-26というゴルジ体を一時的に壊して機能を妨げる化合物を見つけ、その後東京理科大学がこの化合物の人工合成に成功しました。

この化合物を肺ガンを再現したマウスに投与すると、細胞表面に受容体そのものを送れないようにして、ガン細胞の増殖を抑えて縮小させる効果を確かめました。ゴルジ体は後で元に戻り、副作用は非常に少ないようです。

がん研ではJFCR39と呼ばれる、39種類のヒトガン細胞株からなるパネルを利用したガン細胞パネル法を導入しています。この方法は、被験化合物の抗ガンスペクトルを測定し、取りためた既存薬の物と比較することにより、その作用メカニズムについて類似性や新規性を評価する系です。

この系を用いることにより、既存の抗ガン剤とは作用機序が全く異なる新規な抗ガン物質AMF-26を同定し、この化合物がある生理活性物質と同様、ゴルジ体機能阻害を起こすことを見つけました。またこの化合物が奏効するガンを検索したところ、ある種の胃ガン細胞に著効することを突き止めました。

研究チームは「肺ガンの薬物治療は、新たな薬が出ては耐性に変化するイタチごっこのような状態だが、今回の成果は大本を抑えるので多くの患者を救える可能性がある。安全性を確かめて5年以内に治験に進みたい」と話しています。

こういった方向性であれば、副作用のかなり少ない抗ガン剤になりそうな気もします。