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地球深部で起きる炭素循環

2019-11-24 10:37:24 | 化学
人間の大人は常に12Kg程度の炭素を持ち歩いており、これは人体の約18%が炭素原子でできているからです。

こうした炭素原子は、人間が食べ物として取り込む前、空気や海、岩石、生物の身体の中にありました。炭素はあらゆる生命に欠かせないもので、実は地球に存在する炭素の90%以上が地中にあるようです。

さらに地中にも微生物が繁栄していて、それらが持つ炭素の質量の合計は、77億の人類が持つ炭素質量の400倍に上ることが分かっています。

地球最大級の生態系が地下深くにあるという発見は、55か国、1200人の研究者が10年にわたって地球内部の機構を調べた「深部炭素観察(DCO)」プロジェクトによって得られた知見のひとつです。

植物や動物に由来する炭素は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むプロセスにより、数億年の歳月をかけて地中深く潜っていきます。その証拠にかつて生物の一部だった炭素が、地下410~660kmで形成されたダイヤモンドの中から見つかっています。

地中に取り込まれた炭素は、長い時間が経てば、ダイヤモンドや岩石、火山ガス中の二酸化炭素となって再び地表に戻ってくるのです。地球は私たちと同じように、炭素を取り込んだり排出したりしていることになります。

こうした炭素循環のプロセスは、かつては安定していましたが、人間がバランスを崩したといえます。人類が膨大な量の炭化水素(石油、天然ガス、石炭)を地中から取り出して燃やすようになったせいで、地中の炭素が地表に戻る部分だけが加速してしまいました。

さらに都市や道路の建設や森林伐採などにより地表が大きく変化した結果、地球が炭素を取り込む能力も損なわれてしまいました。自然が持つ炭素隔離作用の一例は、オマーンにある「オフィオライト」という岩石層にみることができます。

はるか昔地球の上部マントルから押し上げられてきたこの岩石は、風化作用と岩石中の微生物の作用によって空気中の二酸化炭素を取り込んでいます。

実験により、オフィオライトの岩石層に炭素を豊富に含む流体を注入すると、炭酸塩鉱物が速やかに形成されることが分かっています。これを利用して大気から数十億トンの二酸化炭素を除去できる可能性がありますが、途方もないプロジェクトになるようです。

オフィオライトは北米やアフリカでも見つかっており、他にも玄武岩も自然界の炭素隔離作用とひとつといえます。

こういった地表(空気中)の二酸化炭素を炭酸塩岩石として地中に入れる必要があるかはやや疑わしいですが、地球深部でも炭素循環があるというのは非常に興味深いことといえます。