ごっとさんのブログ

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ガンゲノム医療の課題

2019-11-16 10:19:59 | 健康・医療
ガン患者の遺伝子を解析し、その結果に基づいて治療内容を決める「ガンゲノム医療」が2019年6月から保険診療の中でできるようになりました。

それでも実際に動き出してみると様々な問題が表面化しているようです。個々の遺伝子に対応した「精密医療」の実現に向けた試行錯誤が続いています。

このブログでも取り上げているように、ガンは遺伝子に傷がついて生じますが、どの遺伝子が傷がついてガンを引き起こしているかは、同じ臓器のガンであっても人によって異なっています。

一方で抗ガン剤の中には特定の遺伝子変異をターゲットに開発された「分子標的薬」が多数存在し、原因となる遺伝子変異が同じであれば、臓器は違っても有効な場合があると考えられています。

ガン患者のどの遺伝子に傷がついているかを調べ、最適な治療を提供しようというのがガンゲノム医療です。このガンゲノム医療に用いる「遺伝子パネル検査」が今年保険に収載され、保険診療の中で診断と治療が行えるようになりました。

遺伝子パネル検査は、数多くの遺伝子の変異を同時に追跡するもので、2種類の製品が承認されています。解析する遺伝子数などに違いはありますが、保険での3割負担だと16万8000円で検査が受けられます。

いろいろ出ている問題としては、対象が「標準治療がない」または「標準治療が終わった」固形ガンの患者に限られています。一般的なガンの場合はまず標準治療を受けてからでないと検査を受けられません。

標準治療が終わってなお進行している患者や再発した患者となると相当深刻なケースが多くなります。

遺伝子を解析するだけではなく、パネル検査結果をもとにどういう治療を行うのが適切かを、ガンゲノム医療の拠点となる病院に置かれた専門家会議で検討するという手順を踏むため、結果が主治医に戻ってくるまでには4週間から6週間の時間がかかります。

進行ガンの患者にとってこの時間は長すぎる場合もあり、結果が出る前に亡くなってしまう患者もいるようです。しかも検査の結果、遺伝子に変異が見つかったとしても治療に結びつくとは限りません。

国立ガン研究センター中央病院が16年に行った臨床研究では、遺伝子パネル検査を行って結果が出た患者のうち、遺伝子変異に合った治療薬の投与を受けられたのは13.4%の25人にすぎませんでした。

さらに保険診療の中で承認されている薬を使えたのは25人のうち6人だけで、15人は治験中の薬、4人は適応外の薬の投与を受けました。

このように精密医療といってもまだ試行錯誤の段階で、一般的な治療となるには時間がかかりそうな気がします。