ごっとさんのブログ

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両眼失明もある視神経脊髄炎

2020-07-17 10:27:25 | 健康・医療
中枢神経系が侵され視力や運動能力などが障害される難病「視神経脊髄炎」は、近年診断や治療方法が進歩し、正しく診断され治療を受ければ普通の暮らしができるようになりました。

あまり聞いたことのない病気ですが、ここ10年ほどの間に急激に進歩したため、専門外の医師にはまだ情報が行きわたっていないのが現状のようです。

視神経脊髄炎は脳から脊髄に及ぶ中枢神経網の障害によって視力や運動、感覚などにさまざまな機能低下症状が現れる神経難病です。症状が高度な場合が多く、両眼の失明や強い四肢・体幹の痛みや麻痺などが生じることがあります。

視神経脊髄炎と症状が似ている「多発性硬化症」という神経難病があります。かつては視神経脊髄炎という病気の概念がなく、全て多発性硬化症と診断されていました。

こういう状況の2000年に、インターフェロンが多発性硬化症の再発予防薬として承認されました。当時の診療ガイドラインには、「インターフェロン投与で症状が悪化しても一時的なものである可能性が高いので使い続ける」とありました。

またステロイド剤については「使ってはいけない」と示されていました。ところが視神経脊髄炎の患者は、ステロイドが有効でインターフェロンでは逆に悪化してしまいます。多発性硬化症と診断が区別されておらず、両眼失明したり完全な麻痺になってしまった患者もいました。

そこからある発見がきっかけとなり、視神経脊髄炎は多発性硬化症とは別な病気とされ、診断もできるようになりました。

その発見は2005年、多発性硬化症とされた患者の一部の血中に自己抗体の一種の「抗アクアポリン(AQP)4抗体」というタンパク分子が検出されることが分かりました。抗体は通常体内に侵入した細菌やウイルスなどに結びつき、免疫の攻撃の目印になります。

ところが抗AQP4抗体は自分の細胞や組織にくっついて細胞や組織を壊してしまうのです。この抗AQP4抗体の発見によって、多発性硬化症の中でも視神経と脊髄の炎症の強い患者は、視神経脊髄炎という別な病気として区別されるようになりました。

視神経脊髄炎の初期症状として、視神経炎により急に片目が見えなくなることがあげられます。初回は何もしなくても1週間ほどで治ってしまうことがありますが、この病気は再発を繰り返し、2回目、3回目で失明する例が少なくないのです。

視神経炎が疑われる場合には、できるだけ早く神経内科に相談する必要があるようです。近年IL-6阻害剤という治療薬が開発され、治療法も確実に進歩してきました。

現在は眼からの情報が圧倒的に多いことからも、こういった眼の病気については注意する必要があるのかもしれません。