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有機合成実験の詳細 その2

2020-07-15 10:19:30 | 化学
前回有機合成実験として、A+B→C+(D)という反応をする準備として、反応容器の選定のはなしを書きました。

これで容器のイメージが出来たら、次が反応に使用する溶媒の選定となります。AとBをスムーズに反応させるためには、これを何かに溶かさなければいけませんが、その溶解液となるのが溶媒です。

溶媒と言ってもあまりピンと来ないかもしれませんが、知られているものとしては水やアルコール類なども使うことができます。基本的な条件としては、AとBをよく溶かすもの、反応に影響を与えないもの、反応終了後除去が簡単なものということになります。

通常溶媒として使えるものはおそらく数十種類もありますが、一長一短がありますので、慎重に選ぶ必要があります。その前に有機化学というのは「可逆反応」となっていますので、その点も考慮する必要があります。

可逆反応というのは、AとBが反応してCとDができるのですが、反応が進行してCとDが増えてくると、このCとDが反応してAとBに戻ってしまうというものです。

従って有機化学では100%反応するということは無く、反応条件によっていかに100%に近づけるかの工夫をするところが、有機合成の難しさでもあり面白いところです。逆反応を阻止する最も簡単な方法が、目的物であるCか生成物のDが溶けないような溶媒を選ぶことです。

Dが溶けなければ、反応が進むにつれて沈殿が出てきて、Dは反応に関与しなくなるわけです。その他除去しやすいという点では沸点があまり高くないもの、水に溶けるかどうかなどを考えて溶媒を決定します。

この溶媒は研究者の好みやそれまでの経験が入りますので、人によって変わってくるというある面ではややいい加減なものと言えます。通常溶媒は原料の20倍から100倍程度使用します。

次が反応条件の設定で、まず反応温度を何度にするか決めなければいけません。この反応と類似した反応を知っていれば、それに従った温度設定ができます。通常有機化学ではドライアイスでの冷却の-80℃から溶媒の沸点の100℃までぐらいから選択します。

絶対に冷却が必要な反応もありますが、大部分は加熱も冷却もしない、20℃前後の室温で始めるのが一般的です。

最後がAとBをどういった比率で反応させるかですが、当然ここではモル比という概念が必要になります。例えばAの分子量が500でBが200であれば、5:2で加えればモル比で1:1となるわけです。

Aが原料でBが試薬の場合、Aはなるべく減らしたいので若干Bを多めに使うことが多くなります。モル比で1:1.1とか1:1.2ぐらいですが、これも研究者の好みで決めています。これで準備はほぼ整いましたが、次回に続きます。