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ケイ素と窒素からなる超硬度物質作成

2017-03-29 10:40:43 | 化学
東京工業大学等の研究グループは、半導体などの原料となるケイ素と窒素からなる化合物で超硬度を持つ多結晶体を合成したと発表しました。

これは耐熱セラミックス「窒化ケイ素」に高圧と高温をかけることで、大気中では合成不可能な「スピネル型窒化ケイ素」のナノ多結晶体を合成したものです。この物質はレンズや窓に使われるシリカガラスやダイヤモンドウインドウと同じような透明さを持ちながら、全物質中3番目の硬さと、空気中で1400℃の高熱に耐えられることを確認しました。

透明で硬い物質というとダイヤモンドが筆頭ですが、これは炭素原子が非常にきれいに配列したものです。これと同じように高温高圧化では物質の元素の並び方が変化する、「構造相転移」と呼ばれる現象が起こったものです。自然界でもこういった高温高圧の条件が生じ、ダイヤモンドが生成するというのは面白いものです。

この現象は炭素だけではなくかなり色々な物質でも起こるようで、2番目に硬いとされている立方晶窒化ホウ素という化合物が合成されていました。今回の窒化ケイ素も昔からうまく構造相転移を起こさせれば、3番目に硬い物質候補とされていましたが、純粋で緻密に焼き固まったスピネル型というものが実験的に困難であり、性質は良く分かっていなかったようです。

なおこの窒化ケイ素自身は、非常に硬く割れにくい、耐熱性が高い、化学反応が低いなどの性質を持っており、シリコンナイトライドとしてベアリングやエンジンタービン部品としてよく使用されているものです。

研究グループは、1000tonfという圧力をかけることが可能な高温高圧発生装置を用いて、15.6万気圧、1800℃の条件で実験を行ったところ、1粒当たり150nm程度のスピネル型窒化ケイ素がならんだナノ結晶体(直径2.5ミリ、厚み1.2ミリ)を合成することに成功しました。

あまりにもすごい条件ですので、実感としてはよく分かりませんが、すごい機器があるものと感心します。得られたナノ結晶体の硬さと割れにくさを測定したところ、他の透明な結晶セラミックであるスピネル等と比べて倍程度の硬さを持ち、割れにくさも同様倍程度であることが分かったようです。

また耐熱性についても、ダイヤモンドが700℃程度に対し1400℃以上と高いことを確認しました。この素材は透明でかつ硬く、割れにくいという特性が示されたことから、極端な条件下においても窓材などとして利用できると期待されています。

研究グループによると、今回はあくまで新しい原理を見つけるための実験としており、今後大型化を図り、他の希土類などの元素を入れることで新しい素材の開発につなげたいとしています。

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