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創傷治療、火傷の皮膚はどこまで元に戻るのか

2022-06-12 10:26:32 | 健康・医療
私の周りにはいつも猫がいますが、特に午前中は1匹のネコがよく膝に乗ってきます。

私は座椅子に座ってPCなどを操作していますので、ネコも膝に乗りやすいようですが、だんだん遊ぶようになります。触っている手をなめたり噛んだりしていますが、だんだん興奮すると手が出て爪で引っかかれたりします。

そのため手は小さな傷だらけになっていますが、ここではこういった傷、特に火傷のような大きな傷の治療についてです。

小さな傷であれば治療法は約5000年前からあまり変わっていません。傷口を清潔にして包帯を巻き、後は自然の力に任せるだけです。医療による介入はたとえ大きな傷であっても、主に自然治癒力をサポートすることを目的としています。

傷の治癒は4つの段階で起こり、まずは「出血凝固期」となります。血管が収縮して血が固まり、傷口を素早くふさいで血が流れ出るのを防ぎます。次に「炎症期」となり、傷口に小さなタンパク質が集まって免疫細胞を呼び寄せ、置換組織の成長を促します。

長年初期の炎症は組織の再生を阻害する可能性があると信じられてきましたが、現在では炎症は傷口に細胞を集めるうえで重要な役割を果たすことが分かってきました。

第3段階は「増殖期」で、組織の構造を支えるタンパク質であるコラーゲンの他、酵素や新しい血管などによって損傷部位が再生されます。最後の「成熟期」になるとさらに強くなっていく組織の上に傷跡が形成され、傷は治癒するという流れとなります。

火傷のような大きな創傷では、この自然治癒のプロセスは進みにくくなります。またどんなに治療がうまくいったとしても、治った皮膚が負傷前と全く同じように機能するわけではありません。

感覚神経、汗腺、毛包、免疫脂肪など皮膚の第2層である真皮に存在する複雑な構造は再生されないためです。そこで科学者はさまざまな細胞に分化する能力を持つ幹細胞に注目してきました。

2021年に発表された研究では、静脈性潰瘍と呼ばれる難治性の下腿潰瘍を患う31人を対象に臨床試験が行われました。この研究では間葉系幹細胞が使われ、細胞はドナーの真皮から採取され、濃縮された後に傷口に注入されました。

その後傷口は被覆材で覆われ、この治療により3か月以内に傷口は平均76%縮小しました。その他免疫系を利用する治療法などが現在進められているようです。

このように火傷のような広範囲の傷についても、その被覆材の開発などが進んでおり、幹細胞や免疫系を利用することによって、損傷前の状態に近くなってきているようです。

それでも自然治癒力が基本であることには変わりなく、こういったヒトが本来持っている力はすごいものだと感心させられます。


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