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病気が治っても消えない「慢性痛」

2020-08-10 10:22:06 | 健康・医療
痛みは大きく「急性痛」と「慢性痛」の二つに分けることができます。

指を切ったり火傷を負ったときなどに起こる急性痛は、身の回りにあるさまざまな危険から守ってくれる警告信号であり、生理的な痛みと言えます。

一方ペインクリニックを受診する患者の多くを悩ませている慢性痛は、人間にとって必要のない「病理としての痛み」で、不必要な信号が出ているだけといえます。急性痛が原因が無くなれば消える痛みであれば、慢性痛は原因が無くなっても消えない痛みといえます。

従って急性痛が長期間にわたって続いても、慢性痛ではなく例えば関節リュウマチによる痛みなどは急性痛ということになります。

慢性痛は過去に末梢神経や中枢神経系が何らかの障害を受け、さらに自律神経系が異常を起こしている状況下で作り出されます。端的に言えば痛みに対する感受性が高まっている(感作された)状態です。

慢性痛は意欲の低下、食欲不振、不安やうつを引き起こし、その結果自分の殻の中に閉じこもってしまうこともあります。これらのことから慢性痛は単なる病気の症状ではなく、独立した症候群と考えた方が良いようです。

アメリカでは国民の約3分の1が慢性痛を有し、そのために約6000万人が活動に制約を受けているとのデータがあります。医療費を含めた経済的損失を試算すると、年間600億ドルにも達するとされており、社会にも大きな損失をもたらしています。

慢性痛の成り立ちは急性痛と比べ、極めて複雑です。急性痛に関する研究では、動物実験モデルが用いられてきましたが、慢性痛ではそれが難しく、基礎研究が大きく遅れていました。現在では、脳の中央にある「中脳辺縁系」と呼ばれる部位の関与が注目を集めています。

この部位は生きるための意欲、期待、金もうけからギャンブルや薬物への依存に深く関わっています。最近この系が痛みの制御にも関わっていることが判明しました。相反すると思われる「快」と「痛み」ですが、実はこの二つにより活性化される回路は重なっているのです。

従来痛みは病気の一症状、病気を治せば痛みも自然に取れるはずという勘違いが、慢性痛への対策を遅れさせた大きな原因といえます。慢性痛の原因はひとつではなく、さまざまな病因が組み合わさっていることが多いようです。

元来の痛みに加え、不安や恐怖などの心理的因子が、その病態をさらに複雑なものにしています。この慢性痛に関しては、現在でも確実な治療法ができているわけではありませんが、診断法は確実に進歩しているようです。

身体のどこかが痛むといった症状のある人は、まずはペインクリニックを受診することが良いのかもしれません。


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