遺伝子研究の重要なツールとして、昆虫ではショウジョウバエ、植物ではシロイヌナズナがよく使われていますが、脳の研究にはイカが重視されています。
イカ・タコなどの頭足類がもつ能力は、イカの皮膚細胞の色変化から、コウイカのオスが求愛時にメスに擬態する能力、タコの記憶力や学習能力など多彩なものがあります。
またイカの持つ神経細胞の軸索はヒトの数百倍もあり、この巨大な軸索で電気信号を外套膜に高速で伝えることにより、イカは危険から素早く逃れることができます。
1936年にこの巨大な軸索が発見されると、研究者は神経系や脳の化学的・電気的メカニズムの実験にイカの軸索を使うようになりました。これだけ大きければ、電流を流して電圧の変化を測定でき、中の成分を調べることもできます。
このイカの神経の研究は多数の科学論文と2つのノーベル賞を生み出しています。ひとつめは1963年に、神経型の細胞と一連の化学反応を介して電気信号を伝達する仕組みである活動電位の研究に贈られました。
2つ目のノーベル賞は、アドレナリンなどの神経伝達物質の役割を解明した研究に対し、1970年に授与されています。また最近になりアメリカケンサキイカが、神経細胞内のRNA分子を高速で変化させる特殊な能力があることが分かりました。
イカはこの能力を利用して、体の各部での遺伝子の働きを調節している可能性がありますが、まだ確実なところは分かっていません。この様にイカの遺伝子が注目されてきましたが、進化上の例外だらけの頭足類は、遺伝子研究に適しているとはいいがたいようです。
その第一がゲノムの大きさで、ヒトが約32億塩基対であるのに対し、ケンサキイカのゲノムは約45億塩基対もあるのです。またこのイカの卵には厚いゴム状の卵膜があり、遺伝子編集するための針が充分に刺さらないという問題点もありました。
最後の難関がイカは実験室での飼育が困難という問題もありました。遺伝子編集をした卵を成長させなければ、遺伝子編集の有無が判定できないわけです。この様な多数の課題があったため、イカの遺伝子編集はなかなか進みませんでした。
それでも2020年に米国ウッズホール海洋生物学研究所が、ゲノム編集技術を使って、ケンサキイカの遺伝子を欠損(ノックアウト)させることに成功しました。
この研究は遺伝子編集としてはもっとも初期の段階に属するものですが、前述の大きな課題を乗り越えたという点で評価されることのようです。
まだタイトルのような「脳の研究」までは行っていませんが、イカがモデル生物として使える可能性が出てきたことは、今後の研究に期待が持てるといえるでしょう。
イカ・タコなどの頭足類がもつ能力は、イカの皮膚細胞の色変化から、コウイカのオスが求愛時にメスに擬態する能力、タコの記憶力や学習能力など多彩なものがあります。
またイカの持つ神経細胞の軸索はヒトの数百倍もあり、この巨大な軸索で電気信号を外套膜に高速で伝えることにより、イカは危険から素早く逃れることができます。
1936年にこの巨大な軸索が発見されると、研究者は神経系や脳の化学的・電気的メカニズムの実験にイカの軸索を使うようになりました。これだけ大きければ、電流を流して電圧の変化を測定でき、中の成分を調べることもできます。
このイカの神経の研究は多数の科学論文と2つのノーベル賞を生み出しています。ひとつめは1963年に、神経型の細胞と一連の化学反応を介して電気信号を伝達する仕組みである活動電位の研究に贈られました。
2つ目のノーベル賞は、アドレナリンなどの神経伝達物質の役割を解明した研究に対し、1970年に授与されています。また最近になりアメリカケンサキイカが、神経細胞内のRNA分子を高速で変化させる特殊な能力があることが分かりました。
イカはこの能力を利用して、体の各部での遺伝子の働きを調節している可能性がありますが、まだ確実なところは分かっていません。この様にイカの遺伝子が注目されてきましたが、進化上の例外だらけの頭足類は、遺伝子研究に適しているとはいいがたいようです。
その第一がゲノムの大きさで、ヒトが約32億塩基対であるのに対し、ケンサキイカのゲノムは約45億塩基対もあるのです。またこのイカの卵には厚いゴム状の卵膜があり、遺伝子編集するための針が充分に刺さらないという問題点もありました。
最後の難関がイカは実験室での飼育が困難という問題もありました。遺伝子編集をした卵を成長させなければ、遺伝子編集の有無が判定できないわけです。この様な多数の課題があったため、イカの遺伝子編集はなかなか進みませんでした。
それでも2020年に米国ウッズホール海洋生物学研究所が、ゲノム編集技術を使って、ケンサキイカの遺伝子を欠損(ノックアウト)させることに成功しました。
この研究は遺伝子編集としてはもっとも初期の段階に属するものですが、前述の大きな課題を乗り越えたという点で評価されることのようです。
まだタイトルのような「脳の研究」までは行っていませんが、イカがモデル生物として使える可能性が出てきたことは、今後の研究に期待が持てるといえるでしょう。
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