ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

脳の中を流れる水の役割

2021-07-14 10:24:12 | 自然
近年脳の研究は活発になり、認知症の研究だけではなく新しい機能が発見されています。

脳は固い頭蓋骨の中で液体に漬かっていますが、脳の隅々を満たす「水」は常に流れて入れ替わっていることが最新研究で明らかになっています。この液体は「脳脊髄液」と呼ばれており、脳の衝撃を吸収する緩衝材としての役割を果たしています。

脳脊髄液は脳の中で常に作られている特別な液体ですが、もともとは血液から作られています。血液をこしとって赤血球や白血球などを取り除き、成分調整をして脳内に送り込む特殊な場所(脈絡叢)が存在しています。

成人の脳脊髄液は約130mlと言われており、約5〜6時間で入れ替わる程度のスピードで産生されているとされていますので、1日4〜5回入れ替わっている計算になります。

細胞と細胞の隙間を満たしている液体は「間質液」や「組織液」と呼ばれており、細胞が活動した際に排出される様々な老廃物をリンパ管へと洗い流す役割を持っています。脳細胞を取り囲んでいる間質液は、脳脊髄液が脳組織内に染み込んでできたものと考えられます。

この脳細胞を取り囲む間質液のイオンバランスが、脳の電気的活動のもとになっています。脳は基礎代謝の約20%のエネルギーを消費するといわれており、ボーとしている時でさえ肝臓や筋肉と並んで非常に活発に働いています。

そのため当然さまざまな老廃物が発生します。例えば認知症の原因物質とされるアミロイドβは、「老人班」といわれるように高齢者のイメージがありますが、若い人の脳でも発生しています。

こういったごみをリンパ管によって吸収されるのですが、脳組織ではこのリンパ管が見つかっていません。

アメリカのロチェスター大学の研究グループが、脳脊髄液を標識することでその流れを可視化し、脳脊髄液が脳表から脳の中へと続く太い血管の周囲に存在する空間に沿って脳組織の中に入っていくこと、それが間質液として染み込んでいくことを明らかにしました。

血管の周囲に存在するスペースは血管周囲腔と呼ばれ、老廃物を含む間質液はこれを通って脳脊髄液に戻されるため、リンパ管が無くても老廃物を排出することが可能となっています。実際に脳に注射したアミロイドβが、脳脊髄液の流れに依存して排出されることが示されています。

この脳内の液体の流れには、アクアポリン4と呼ばれるタンパク質が重要な役割を果たしていることも分かりました。こういった脳脊髄液と間質液の交換による老廃物の排出の仕組みが、徐々に明らかになってきました。

この辺りのメカニズムをうまく利用すれば、単にアルツハイマー病だけでなく、脳の疾患の解明につながるものと思われます。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿