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パーム油の代替となる「微生物油」の開発が進む

2023-02-21 09:27:01 | 自然
パーム油については植物油という程度の認識しかありませんでしたが、ポテトチップスなど非常に多くの食品に使われている代表的な油のようです。

近年この消費量は増加していますが、それに伴い色々な問題が浮上しています。パーム油の生産国であるインドネシアとマレーシアでは、原料であるアブラヤシのプランテーションのために多くの森林が失われました。

森林伐採は、土壌や水質の低下、気候変動などさまざまな環境問題につながり、生物多様性への影響も大きくなります。森林を伐採してアブラヤシ農園を作ると、哺乳類の多様性は最大90%減少するという研究もあります。

こうしたことからパーム油の代替となる油として、酵母や藻類などの微生物から作られる微生物油が注目を集めています。

この微生物油の歴史は古く、第一次世界大戦の影響でバターやラードが手に入りにくくなったとき、ドイツの研究者たちはある種の酵母から高脂肪ペーストを生産しました。しかし戦争が終わって十分な植物油が得られるようになると、この手法は姿を消しました。

近年になって再びパーム油の代替として、環境に優しい微生物油が注目されるようになりました。小さな屋内スペースがあれば、微生物はすぐ増殖するので質の高い油を作ることができ、実際微生物を増殖させパーム油に近い油を生産しようとしている企業がいくつか出ています。

しかしパーム油に勝るのはかなり難しいようです。アブラヤシは極めて収穫効率の良い作物で、1ヘクタールのアブラヤシ農場で生産できるパーム油は年間3.74トンと、他の食用油の6倍以上に相当します。

パーム油に含まれる飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の量がほぼ同じなため、化学的に非常に安定しており加工食品はとても長持ちします。現時点で40種類以上の藻類と70種類以上の酵母菌株が油を生成するか油を多く含むことが分かっています。

醸造タンクに酸素と糖分を加えると、微生物は糖を代謝して油脂を生産し始め、細胞内に蓄積した油脂が限界まで増えると細胞から放出されます。この糖を廃棄物を食べる微生物を育てることができれば、さらに持続可能性が向上するとして多くの研究が行われています。

また微生物油の最大の利点となるのは、合成生物学の技法を用いることで、油を生産する微生物自体を設計できるところです。パーム油の特性を再現する場合は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率を半々に近づければよいわけです。

用途によって含める脂肪の種類を変えることができるので、たとえばパルミチン酸をそれより健康に良いステアリン酸などの飽和脂肪酸に置き換えることもできます。

現在はまだ食品用の開発はできていませんが、美容品や化粧品がターゲットになっているようです。まだ大規模生産ができていませんが、将来的には微生物油が食品の分野にも進出しそうな気もしています。


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