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メタボやアレルギー性疾患がなくなる刷子細胞

2020-06-26 10:23:53 | 健康・医療
近年はアレルギー性疾患やメタボリックシンドロームが解決すべき重要な社会問題になっています。

その治療法として、研究者の間で注目されているのが「刷子細胞」です。この細胞は全く知りませんでしたが、小腸をはじめ体内の色々なところにあるといわれる細胞で、60年ほど前に発見されたものです。

小腸には栄養素を吸収する上皮細胞など4種類の主要な細胞がありますが、刷子細胞は全体の約0.4%程度と非常にごく僅か存在しています。細胞は必要なタンパク質をつくるとき、mRNAを転写しますが、この時転写を制御するのが転写因子です。

マウスを使いこの転写因子のひとつであるSkn-1aを欠損させると、消化管の刷子細胞も完全に消失することが分かりました。

この刷子細胞の無いマウスと、通常のマウスを同じようにえさを与えていると、通常のマウスは正常に成長し体重も増えますが、刷子細胞の無いマウスは体重が増えず、成長も抑えられてしまいました。

さらに高脂肪食を与えると、通常のマウスはどんどん太りますが、刷子細胞の無いマウスはそれでも体重が増えないのです。このメカニズムは完全には分かっていませんが、刷子細胞の無いマウスの代謝エネルギーが、通常のマウスよりも増えていることは分かりました。

運動量に差はなく、マウスの体温にも差がないのに代謝エネルギーの差が体重が増えないことに関係していることは確かなようです。そこで消費エネルギーを上昇させるホルモンを調べたところ、血清中の甲状腺ホルモンに変化は見られませんでしたが、カテコールアミンの尿中分泌量が刷子細胞のないマウスでは増えていることが分かりました。

カテコールアミンとは、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの総称で、快い感情や意欲などに関わるホルモンです。

このカテコールアミンが増えたことで、脂肪分解の亢進、肝臓のケトン体の上昇、筋肉の熱生産量の増加、膵臓のインスリンの低下につながり、消費エネルギーが上昇し体重の増加が抑えられたと考えられます。

この仕組みをさらに解明すれば、メタボを始めとした肥満や糖尿病の新たな治療法の開発につながる可能性があります。

長くなりましたのでアレルギー疾患については省略しますが、免疫のセンサーとなる刷子細胞の働きを抑えることができれば、過剰な応答を抑えることができ、アレルギー疾患の予防につながると考えられています。

この刷子細胞の研究は始まったばかりですが、小腸などに存在するこの微量な細胞が色々な働きをしているようで、研究が進展すれば面白い効果が見つかるような気もします。


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