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糖尿病高齢者の心不全対策

2020-06-27 10:22:55 | 健康・医療
現在は糖尿病を発症しても、適切なタイミングで適切な治療・検査を受けていれば50代、60代で亡くなることはほとんどありません。

効き目の良い糖尿病の薬がたくさん出ているため、長生きする糖尿病患者が珍しくなくなりました。今問題になっていることのひとつが、糖尿病を患う高齢者の心不全です。

高齢者になると健康な人でも血管が硬くなり、動脈硬化が起こります。糖尿病の場合、心臓に栄養を送る太い血管(冠動脈)の動脈硬化が起こりやすいだけでなく、心筋細胞に直接栄養を送る顕微鏡レベルの細い血管(微小血管障害)にも動脈硬化が起こり、心筋のエネルギー代謝に影響を与えます。

それによって糖尿病がある人は、心不全のリスクが高くなるのです。動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中などの原因にもなりますが、これらはステントやカテーテル治療の進歩で助かる人が増えました。しかし心筋梗塞で命を落とさなくても、心臓に疾患を抱えていることは変わりません。

心不全とは、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり生命を縮める病気と定義されています。心不全の定義に当てはめると、糖尿病がある時点でステージAとなり、心筋梗塞などを起こして心臓に疾患を抱えるようになるとステージBとなります。

心機能が低下して心不全を発症するとステージCです。心不全を発症すると、現在の医療では完治しづらく、5年以内に50%の人が亡くなるともいわれています。

つまり糖尿病を発症しないことが重要であり、もし発症してしまったら今度は心筋梗塞を発症しないことが非常に重要となります。これまでは糖尿病の薬は血糖値は下げるものの、心不全に関しては予防効果が見られませんでした。薬によってはかえって心不全のリスクを高めるものもありました。

日本で広く使われているDPP-4阻害剤も、心不全予防効果があるのではないかと期待されましたが、結局抑制効果が証明できず、むしろ心不全が増えるという結果が出ています。

ところが血液中の過剰な糖を尿に積極的に排出して血糖値を下げる、SGLT2阻害剤という糖尿病治療薬の研究で、画期的な結果が出ました。この薬を服用すると、血糖降下作用だけでなく、心不全予防にも役立つことが分かったのです。

さらに専門医の注目を集めたのは、糖尿病患者の心不全リスクを下げるばかりか、糖尿病でない人のリスクを下げる結果も出ました。

この薬はナトリウムの再吸収を抑える作用もあり、血圧低下にも効果があります。ただし残念ながら脱水作用や頻尿という副作用もあるようですが、糖尿病の高齢者には理想的な薬といえるのかもしれません。

この辺りをどの程度通常の医師が分かっているのかは、やや疑問のような気もします。


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