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「正社員」は特殊な身分か

2019-08-30 10:25:54 | 時事
我々が普通に使っている「正社員」が実は日本独特の特殊な身分であるという論説を読みました。一部納得できるところもあり、ここで紹介します。

ヨーロッパ各国では、中世のギルドを母体として様々な職種別組合が発達しました。その組合が職人のための教育訓練コースを設け、その組合の親方が技能資格を授けることで職人として働けることになっていました。

イギリスの会計士や薬剤師なども同様な組織でした。こうした慣行が基になり、近代化と共に学校で近代的な職業訓練を経て資格や学位が授けられるようになりました。労働者は職種別の組合や専門職団体に組織され、賃金交渉も職種別・業種別で行いました。

こうした社会では、業務追行に必要な職業訓練や職業経験、資格や専門学位などを有する人ほど高い賃金で雇われます。そのかわりに人種や性別、年齢などでは賃金を差別しない「同一労働同一賃金」が原則となっています。

ところが日本の大企業の場合は、企業に採用されるにあたって専門的な訓練を受けているかどうかはほとんど重視されず、学歴つまりどの大学入試を突破したかをその人の潜在能力の指標と見て採用します。

入社後も専門性や職業経験とは関係なく、年齢と社歴に応じて賃金が上がっていきます。同じ仕事をしていても、所属する企業の規模が違えば賃金に著しい差が生じることもあります。

このような雇用慣行の原型は、明治期の官庁にあるようです。この官庁のモデルが官営企業を媒介として、民間企業の職員の待遇にも踏襲されていったとしています。

長期雇用や年功賃金が一般の労働者まで広がったのは、戦後の労働運動が「社員の平等」を第一に要求したためのようです。そこで上級職員と一般労働者の差別がなくなり、社員の平等が達成されました。

このことが1970年代には、日本の製造業の強みにつながりました。工員レベルまで長期雇用と年功賃金が保証されたため、従業員の勤労意欲が高まり、長期勤続で技術蓄積も上がりました。

欧米の仕組みでは、資格などがないと管理職になれず、大半の人は技能蓄積も進みませんでした。また資格も職業経験年数もない若者は最初から雇ってもらえず、1970~80年代にかけて若年失業率が高くなりました。

ところが同時期の日本の企業は、何の訓練も受けていない素人同然の若者を新卒一括採用し、長期雇用して社内教育で彼らに技能を蓄積させていました。

この社内訓練と長期雇用の組み合わせで、日本の製造業は高品質の製品を生み出せていたようです。長くなりましたので、この正社員制度が続けられたのかは次回に続きます。 



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