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藻類のデンプンが光合成の効率を維持

2020-06-20 10:30:58 | 自然
植物の養分であるデンプンが、藻類では葉緑体における光合成の効率を保つ重要な役割を果たしていることを発見したと、京都大学の研究グループが発表しました。

明らかになった仕組みを応用することで、作物の生産性向上につながる期待があるようです。

植物は太陽光のエネルギーを利用して二酸化炭素(CO2)を取り入れ、ブドウ糖を経てデンプンなどの炭水化物を作ります。ただし水中ではCO2の多くは水と反応し、重炭酸イオン(H2CO3)として存在します。

そのため多くの藻類は重炭酸イオンを取り込んだうえで、「炭酸脱水酵素」を使ってCO2に変換しています。

多くの藻類の葉緑体の中に、このCO2を固定するための別の酵素が集まった器官「ピレノイド」があり、これを光合成でできたデンプンが取り囲んだ構造の「デンプン鞘」があります。

ピレノイドに固定できず漏れ出たCO2は、炭酸脱水酵素がピレノイドの周囲に移動して重炭酸イオンに変換することで、再びピレノイドに取り込まれるサイクルが起きています。このように炭酸脱水酵素が移動する仕組みや、デンプン鞘の役割は分かっていませんでした。

京都大学の研究グループは、単細胞の緑藻クラミドモナスのデンプン鞘を造れない変異株を詳しく分析しました。その結果から、デンプン鞘はCO2がピレノイドから漏れ出すのを防ぐ障壁になっていることや、炭酸脱水酵素を自身の周囲に引き寄せる働きを持つことが分かりました。

変異株ではCO2の漏れ出しを防げず、しかも炭酸脱水酵素が葉緑体の異常な場所に集まってしまいCO2をリサイクルする機能が一部失われて、生育が遅れたとみられます。

気候変動による将来の食糧不足が指摘される中、藻類がCO2を集める仕組みを陸上の作物に利用する研究が進んでいます。イネや小麦などの細胞内でピレノイドを合成し、光合成の能力を挙げて生産性を高めようとするものです。

今回の成果は作物の細胞内でのピレノイド合成のみならず、デンプン鞘の形成や炭酸脱水酵素の正しい配置も重要になることを示しています。藻類のCO2の固定は膨大な量に上り、大気中のCO2濃度の削減に大きな役割を果たしています。

この効率化のメカニズムが分かることで、陸上の作物の生産性が上げることは単に食糧増産だけでなく、地球温暖化問題の解決にもつながる可能性がありそうです。

研究グループは、藻類の生存に必須であるCO2を集める仕組みを解き明かし、作物の生産性を向上するという夢を近い将来に実現したいと述べています。


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