ごっとさんのブログ

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昔の麻酔薬 クロロフォルム

2015-10-21 10:19:19 | 化学
クロロフォルムは私にとっては、非常に身近な化合物で、ある意味好きな溶剤ですが、どの程度一般化しているかは分かりません。サスペンスドラマなどで、犯人がハンケチなどに染み込ませて、鼻と口を覆うと一瞬で気を失うというときに使われていますので、ある程度は聞いたことがある名前かもしれません。

化合物としては、炭素に1個の水素と3個の塩素がついた構造で、ハロゲン化炭素と分類されるものです。性質としては、比重が1.5程度と高く水より重い液体です。我々はクロロフォルムを、溶剤、つまり色々な物質を溶かすものとして使用するのですが、比較的溶解度が高く、多くの有機物を溶かす性質を持っています。ですからこの仲間である、ハロゲン化合物は、例えばドライクリーニングの洗剤や、印刷工程の洗浄液などに使われています。

クロロフォルムは、水から化合物を抽出するための溶媒としても非常に優れています。我々の実験では、目的とする物質が、水の中に混ざっているということが多いのですが、それを溶媒に移すというのが抽出工程です。その時クロロフォルムは水に混ざらず、重いので水の下層に来るので、いろいろ便利なところが出てくるわけです。さらにクロロフォルムは水に対しての溶解度が非常に低い、つまり混ざらない性質を持っていますので、抽出した時に水との分離が非常に良いのも特徴です。また沸点が60℃程度と低いので、非常に蒸発しやすく、クロロフォルム溶液は簡単にのぞくことが出るのも特徴の一つです。

しかし問題は麻酔性です。かなり前は医療用麻酔薬として使われていたようですが、かなり毒性も高く副作用が出やすいといったことから、現在は使用されていません。私は若いころ、このクロロフォルムをピペットで吸ったことがあります。昔はピペット類は口で吸うのが普通で、特に試してみようなどという気はなく、他の溶媒と同じようにやったのですが、当然口の中にクロロフォルム蒸気が入ります。その瞬間かなりのショックを感じ、甘い感じがしました。まあこれでクロロフォルムは麻酔剤であり、口で吸ってはいけないことが実感できたわけです。

こういうばかばかしい経験から、先に述べた一瞬で気を失いというのはないような気がします。実験をしたことはないのですが、頻繁に扱っている感じからは、少なくとも数分は口と鼻を覆う必要がありそうです。クロロフォルムは、まず特定化学物質というやや危険なものに分類され、現在は毒劇物に指定されていますので、やや使いにくくなってしまいましたが、実験室レベルではほかのものには代えがたい溶剤として使用されています。

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