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カメムシなどが持つ独自のホルモンを発見

2021-02-22 10:24:52 | 自然
昆虫の独自のホルモンやフェロモン研究はもう40年以上も前に非常に活発に研究されていました。

その後主な昆虫の探索が終わったのか、あまり話を聞きませんでしたが最近また始まったようで、大阪市立大学などの研究チームが、農害虫のカメムシや人に害のあるトコジラミの仲間の昆虫からホルモンを発見したと報告されました。

これは成長に関わるホルモンで、これらの害虫だけに効く農薬の開発につながる可能性があります。

カメムシ亜目に分類されるカメムシは米に斑点を生じさせたり、果実の表面を凸凹にしたりして商品価値を落とし、トコジラミは寝具などに発生して人に腫れやかゆみなどの被害をもたらします。

昆虫の多くに同様な構造の「幼若ホルモン」が見つかっており、これは成長や脱皮に関連し、特に幼虫のまま止めてしまう作用を持っています。カメムシの一部は構造が異なる独自の幼若ホルモンを持つことが分かっていましたが、カメムシ亜目に共通する特徴かどうかは分かっていませんでした。

研究チームはヒゲナガカメムシやトコジラミなどカメムシ亜目のうち31種類の虫のホルモン分泌器官を取り出し。それを培養することで解析に必要な大量のホルモンを抽出することに成功しました。

そしてほかの昆虫のホルモンとは異なる、独自のホルモンを持つことを見出しました。このホルモンは幼虫の状態を維持する働きがあり、脱皮して成虫になるタイミングで分泌されなくなります。

脱皮前にこのホルモンを与えると、カメムシ亜目の虫は正常な脱皮ができず死んでしまいます。なかなか面白い発見ですが、問題はこのホルモン類が農薬として使用できるかです。

私は40年以上前ですが、この昆虫幼若ホルモンの新しい化合物の探索研究を行い、非常に強力な活性を持つ化合物を合成することができました。

これが農薬として使用できるかは、農薬グループが開発してくれたのですが、確実に害虫を殺すことはできるものの大きな問題が出てきました。このホルモンはさなぎになることができず幼虫のまま死んでしまうのですが、その分幼虫の期間がやや伸びてしまうのです。

つまり幼虫の食害が通常よりもひどくなってしまったのです。来年は害虫がいなくなるかもしれませんが、使うことによって被害が拡大するような農薬は使われるはずがありません。そこで用途を変え、死なない程度の量をカイコに使うことを試みました。

すると通常の1.5倍程度の巨大カイコとなり、マユも大きなものになりました。ところがマユが大きくなるのですが、巨大カイコにするためのエサの量との採算が合わないということになりました。

その他色々試みましたが、この新規幼若ホルモンを農薬にすることはできませんでした。私にとってはなかなか面白い思い出となっています。


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