缶ベルをお貸しいただいて、最初に弾いてみて思ったのは、これは0ゼロだな!
という事です。
これは新しい光舜松脂ゼロのデザインです。
基という意味ではありますが、ゼロと呼んでいます。(キラキラネームですね)
缶ベルなどと言っても、よほどマニアックな方でないと知らないようです。
その缶ベルを弾いた感じでは、光舜松脂の0ゼロ(今後は基という字に替えようかな?と考え中です)の弾き心地と音色だなという事です。
要するに天然熟成の松脂なのです。
数十年も地中で自然の環境の中で少しづつ変化してきた松脂です。
松脂自体は樹液ですから
採れたばかりは単なる液体です、その90%近くがオイル分です。
そのオイル分が地面の中で少しづつ無くなり、その間に中に含まれている松脂成分が結晶化していったものです。
その結晶化した塊を擦弦楽器の弓に塗って音を出すようにしてきたのです。
地面の中で、徐々に変化してきたものですから採れた場所や環境などで質としては相当バラバラなものだったでしょう。
たぶん、それを使っていた演奏者あるいは楽器制作やたちが、あそこの場所で取れたものは良いがここで取れたものは今一つなどとやっていたのでしょう。
その中の一つが、かなり良いということでベルナルデルさんが採取して販売し始めたのではないかと思います。
それが、世の中の変化というか、人がその性である上昇志向、より良いものをより便利なものを目指すという性質で、それまで使われていたガット弦(ヒツジの腸を乾燥させて細くしたもの)から金属を使うことでより伸びにくくし質も安定させて来てから、天然熟成ではその弦の振動を十分産み出せなくなったことから、天然熟成の松脂は消えていったのだと思います。
それは、天然熟成の松脂の不安定さそして所謂引っ掛かりのつよさがないからでしょう。
松脂の結晶は長い間低い温度で結晶化したものは細かくはなるけれど、分子の結合力が低くなってしまうからのようです。
ですから細かい分様々な倍音を産み出しますが、引っ掛かりがとても弱いです。
弦が金属巻になって松脂のグリップ力が大きくないと弦が良く振動しなくなって、天然熟成の松脂の役割も終わったのでしょう。
致し方なく松脂製造各社はそれらの天然熟成の松脂に油分を加えたり、あるいは原材料の樹液から作るようになったようです。
勿論光舜松脂は天然ではありません。天然熟成の過程をモデルにして人工的に作り上げたものです。
たぶん、ここのところが、缶ベルと光舜松脂の違いになるのでしょう。
缶ベルも光舜松脂も松脂成分の結晶化したものです。
その結晶化のさせ方の違いで硬さも形状も変わります。光舜松脂はそれをある程度は自由にコントロールできるようになったようです。
ところが一度結晶化してしまうと、その形はなかなか変わりません。
結晶というのは分子が一番安定した形だからです。
ダイヤモンドや水晶あるいは他の宝石などがそうでしょう。
いずれにせよ、天然熟成の工程を経た松脂というのは普通はガット弦くらいを弾くグリップ力きりないようです。
光舜松脂「基」もその限りなく細かい粒子という性質上大変綺麗な繊細な音色にはなりますが、今の金属巻のヴィオラやチェロコントラバスの太い弦を振動させる力は持っていませんね。
そして現在の引っ掛かり重視の松脂の音に慣れた方には物足りないと思う方もいらっしゃるようです。
缶ベルにしろ光舜松脂の「基」もヴァイオリンを弾くにはとても良い音色を引き出す松脂と言えるでしょうが、所謂引っ掛かりを求める,人には少し物足りないとも言われますが、古典曲を弾く方達からは大変好まれます。
シンプルで優雅で音色が豊かなのが「基」ですし、天然熟成のよさになります。
そしてこの「基」が全ての光舜松脂の原料なのです。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ