たまたまこのような楽器に出会ってしまったのかどうか?
今回「音を良くして欲しい!」送られてきた二胡を、見てみまして。
これは手の施しようがないと、久しぶりに思った二胡でした。
この画像は、胴の後ろから皮を見た画像です。
違いに気が付きましたか?
最初のはかなり明るいですね。
二番目もそれほど暗い(皮が厚い)というわけではありません。
最初の物は、鱗と鱗の間が、とても明るい線の交差に見えます。
二番目の物は鱗と鱗の間が黒い線に見えます。
これ違いは、最初の物は薄く削りすぎているということです。、もう少し若い蛇ですと、このくらいに明るく見えるものもあります。
しかし若い蛇はもっと鱗が小さいです。
北京系の楽器は比較的このように全体に明るく、要するに皮をかなり削り込んだものが多いのですが、
この楽器は蘇州系なのです。
誤解のないように言いますと、北京系も、ここまで鱗と鱗の間が、削り込まれているわけでもないのです。
ここまで、皮を削り込むと、音は大きくなります。皮が薄いと振動が大きくなりますから。
ですから、皮を張っている専門の人は音を大きくするために、皮をとても削り込む人もいます。
ただ手作業ですから、もともとの皮の強さに合わせるのが大変でしょうね。
この皮の場合、やりすぎてしまった、という事なのかもしれません。
皮を張ったばかりの時にはそれほど問題は出てきにくいのです。
新しいうちは、皮にも張力が残っていますから、むしろ大きく響く良い楽器に聞こえることもあります。
ところが弾き込んでいくうちに、だんだん音が割れてきます。
特に内弦の音の割れはひどくなります。
音が大きく響くのは楽器として望ましいと、楽器つくりも愛好家の方も考えます。
それにはいくつか方法があって、まずは振動版(二胡の場合蛇皮)を薄くする。
もう一つは、木部を改造する、特に棹の木の質を硬くてよく響くものに変えると、楽器全体としては、とってもよく響く楽器になります。
ところが、二胡の場合、皮だけを張っている専門家の方も多いですから、ついつい皮を加工することだけで響きを大きくしようとしているのかもしれません。
昔から名人といわれていた人たちとは、少し違ってきているような気がします。
以前から、様々な方に見せていただいた、名人たちの楽器の特徴の一つは、棹にとても良い材料が使ってあることです。
良い楽器になるということが、わかっている胴や棹を選びそれに良い皮を張っているのですね。
棹も、硬くてしっかりして、響きの良い部分が使われています。
今回のお預かりした楽器、もうすでに棹が曲がっています。
銅と同じ材料なのではありますが、やわらかいところです。
蛇皮もここまで薄くしてしまうと、時間がたつごとに音割れもひどくなってきます、そして棹が曲がり始めているので、
音の鳴りも不安定になってきてしまいます。
これは皮を張り替えて、直して棹ももう少し硬い材料に変えるか。あるいは、棹を直してだましだまし使うしかないのかもしれません。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ