フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

Dグレ「クロスXラビ」小説『wish』①

2009年04月05日 | Dグレイマン関連

注意!!
①これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。
②Dグレ「クロスXラビ」甘々ラブラブで、ややショタ気味です。基本設定は完全ショタです。このカップリングやラビ受けやショタが苦手な方はご遠慮ください。
③原作の設定は完全無視、また多数捏造しております。くれぐれも信じないように!(笑)また、前回の小説とは全く別設定で(一部同一設定あり)、続きではありません

④文章の一部は、うっかり目に入らないように反転させることがあります。

  
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         wish 


 仮想19世紀末の仮想都市・江戸。日本は鎖国を解き、科学技術の導入や産業振興を試みたがなかなか振るわず、その後方針を180度転換、外貨獲得のため観光立国を目指し、鎖国状態が続いていたことを逆手にとって、「エキゾチック・ジャパン」を宣伝文句に世界中に売り込んで、外国人観光客を積極的に受け入れ始めた。その甲斐あって日本への観光旅行ブームが巻き起こり、大勢の観光客が押し寄せ、日本は──とりわけ京都と江戸は、街に外国人が溢れる国際都市に変貌した。
 一方、その状況は「黒の教団」にも影響を及ぼしていた。これまでファインダーたちが入り込めなかった日本に、もしかしたらまだ大半が行方不明のイノセンスがあるかもしれないと、観光客にまぎれて彼らを潜入させていったのだった。

 ブックマンが日本を訪れるのは、20年以上ぶりだった。初めて訪れたのは日本が開国して数年後、今の日本ブームが起こるよりもずっと前のことで、ブックマンの記録の中でも長らく空白だった日本に関する情報を集めようと、1年以上滞在した。そして今回の再訪問は、後継者として育て始めたジュニア──今はブックマン共々「黒の教団」にエクソシストとして所属し、教団内での名は「ラビ」と名のっている──の見聞を広めるためことと日本語の習得を目的としていたため、彼らとしては割合長く、3か月にわたって国内を巡っていた。おかげで特殊な記憶法と言語習得技術によってジュニアは、話すだけならほぼ流暢に日本語を操れるようになっていた。
 そんな彼らがそろそろこの島国を離れようと江戸へ戻ってきたところへ、ファインダーが教団からの指示を持って尋ねて来た。
 江戸の吉原地区──そこは政府公認の遊郭街である。外国人観光客も出入りし、多くの金が落とされる場所として、今や政府によって厳しく統制されている。遊女たちは定期的に健康診断を受け、技楼も決められた基準──遊女や使用人の労働基準から施設の衛生・防災設備まで──をクリアしなければ営業を許可されない。おかげで「吉原」は安心して快楽を買える場所として、男性観光客の人気スポットとなったのみならず、他に収入を得る術を持たない女たちも、好待遇で稼げる場所として世界中から出稼ぎにやってきた。その吉原のある妓楼で、奇怪現象が発生しているというのである。
 だがそれは吉原という特殊事情に阻まれ、噂の域を出ていない。キリスト教会の力が政府に及ばない日本では、公権力を使って調査に入りこともできず、民間の協力者もまだ得られていないため、二の足を踏んでいる状態だった。しかし、イノセンスがあるのならば、絶対に手に入れなければならない。そこで教団は、その妓楼内に団員を潜入させて原因を探り出し、イノセンスだったなら入手することを決定したのだった。
「なんでさ?!こっそり忍び込んで探して取って来りゃいいじゃん!!」
「奇怪現象は常に起こっているわけではないらしい。忍び込んだところで当てもなくどうやって探すつもりだ?」
 悲鳴を上げたラビに、ブックマンは冷たく答えた。
「そんなこと言ったって、絶対男だってばれるって!オレ、指名されたらどーするさ?!」
「指名されんように、ぶさいくな面(ツラ)でもしておれ」
 一時金をもらって年季を勤める遊女もまだ残ってはいたが、昔の吉原と違い、今では完全歩合制の通いの遊女や、住込みの賃金制など、さまざまな形態の遊女がいる。なので、16歳になったばかりのラビを出稼ぎ遊女として送り込もうというのがアジア支部の指令だった。なにしろ女性のエクソシストは元帥が1人と、年端もいかない少女しかいないので、男性エクソシストの中では神田ユウと並んで最年少のうちのひとり、ラビに白羽の矢が当たったのだ。もっとも、性格的に神田には無理と判断されたという理由もあったのだが。
 さんざん抵抗したものの他に手がないと押し切られ、ラビは形ばかりの面接──保健所の健診結果とパスポートさえあれば、格の高い大見世でもない限り、歩合制の遊女を断ることはまずない。もちろん、それらは偽造した──を受け、その夜から見世に出ることになった。
 問題の妓楼は中見世に格付けられており、上級遊女から下級遊女まで約40人が勤めていた。外国人の遊女もいたが、吉原では日本情緒を守るため必ず着物を着ることが決められていたので、髪こそ洋風に結っていたりリボンを結んでいたりしたが、皆振袖を前で帯を結んで着ていた。
 ラビも、潜入開始前にひとりで着物を着る特訓をさせられた。胸にはタオルを巻いてふくらみを持たせる。髪を下ろし、眼帯は上から布を巻いて印象を和らげ、頭の横で結んで垂らす。白粉など塗らずとも少し紅を注すだけで、まだ少年の域を出ないラビは、十二分に少女に見えた。右目を隠しているのもマイナスどころか、むしろ痛々しいような妙ななまめかしさを感じさせた。
 初日、吉原内に借りた小さな部屋からその姿で出かけようとしたラビに、ブックマンは言った。
「……頭から何かかぶって、顔を隠していけ」
「そのつもりだけど?まだ明るいから男だってばれるといけねえし」
 ラビはきょとんとした。
「いや、ばれることはないだろうが……店でも、外から見えないように陰に隠れていろ」
「わかってるさー」
 振袖の長い袂の中には、彼のイノセンスである槌を入れていた。また、いざというときのために科学班特製の即効性の麻酔薬を仕込んだ針も隠し持っている。
「んじゃ、行ってくる」
「うむ」
 妓楼の営業時間は午後6時から0時まで。と言っても新規の客を迎え入れるのが0時に終了するというだけで、客のついた遊女はその後ずっと客の相手をし、つかなかった遊女たちはそのまま大部屋で眠ったり、近所に住むものは帰ったりする。ラビは帰らずに、楼内の調査をするつもりだ。
 6時より前に店に着いた彼は、裏口から中に入り、開店準備に追われている雇い人たちに愛想良く挨拶しながら、まっすぐ表には行かず、中を一巡りし、庭にも出てみた。
 妓楼の造りはどこもほぼ同じで、中庭に面して建物が配置されている。建物はすべて2階建てで、2階には客をもてなす部屋がずらりと並び、1階は厨房などの水周りと、遊女達の仮眠用大部屋、それに住込みの者や主人一家の部屋など、生活の場となっている。ここで起こっている奇怪現象の噂は、「歩いても歩いても、出口にたどりつかない」というものだった。
 この妓楼は建物が渡り廊下でロの字型につながっているのだが、客が夜中に小用を足そうと廊下を歩いていくと、どこまでいっても厠にたどり着かない、或いは元の部屋に戻れないというのだ。最初は酔っているせいで、同じような部屋が中庭を取り囲んでずらりと並んでいるのでわからなくなったのだろうなどと笑い話にしていたのだが、そのうちに戻ってこない客を探しに行った女まで戻れなくなって、朝になって自分の部屋の前で座りこんでいるのが発見されたとか、1階に下りる階段まで見つからずやけになった客が、庭に飛び降りて怪我をするという事態になって、人々の間に噂が広がり、日本駐在のファインダーの耳にも入ったのだった。
 そんなわけで、その噂の妓楼を一目見ようという野次馬や、自分も体験してみたいと登楼する客まで現れ、妓楼はむしろ大賑わいとなり、楼主もほくほく顔で遊女はいればいるほどいいという状態で、難有りのラビでも潜り込めたというわけだった。
 妓楼の母屋の通りに面したところには、張見世という、遊女たちの控えの間がある。ここには壁はなく代わりにベンガラ格子が取り付けられ、道行く人々が遊女の品定めができるようになっている。表からよく見える格子際の中央には上級遊女が陣取り、端にいくにつれ格が下がる。ラビはもちろん、いちばん後ろの端だが、それでも表からあまり見えないようにうつむいたり、他の遊女の陰に座ったり、しょっ中用足しだの水が飲みたいだのと引っ込み、指名されないように気をつけた。そして売れ残りの中に入って大部屋で雑魚寝しつつ、皆が寝静まったころにそっと抜け出して、楼内を探った。
 しかし、ラビが来てから折悪しく奇怪現象は起きず、無為に4日が過ぎてしまった。5日目ともなると周りの遊女も心配して、「もっと前へ出なよ」「この商売初めてなの?怖がってるのはわかるけど、覚悟決めないと稼げないよ」と気にするようになり、楼主からも「客がつかないようじゃ、うちにいてもらってもねえ…」といやみを言われる始末。これはそろそろあの薬を使うしかないのかと暗くなりながら、その日もラビは張見世の隅で縮こまっていた。
 上級遊女たちはすっかりいなくなり、気づけば40人が押し合いへし合いしていた張見世には、ラビを含めて5人しか残っていなかった。通りかかる人もまばらになり、宴会のにぎやかな音曲も絶え、店々の明かりもぐっと減っていた。本当は通りに電気を引き、終夜営業にしてしまうこともできるのだろうが、それでは江戸情緒がなくなってしまうと禁止されているのだ。
 そろそろ今夜も店じまいか…、と連日の気疲れから壁にもたれてうとうとし始めたラビの耳に、女たちの興奮した声が聞こえてきた。
「見てみて、すっごいいい男!顔を半分変な面で隠してるけど、でもいい男よ!」
「本当、いい体格してるし!どこの国の軍人さんかしら?見たことない制服よねぇ」
「遊びに来たんじゃないのかしら?それとも気に入った娘がいなかったのかしら」
「案外、見世番に断られたのかもよ。だってあんなでかい男、あたしらが壊れちゃう」
 格子に張りついていた女たちが、一斉に嬌声を上げて笑った。
 ラビはふらりと立ち上がった。
 格子越しに、近づいてくる姿が見える。豊かな赤い髪、右半面の白い仮面、金糸で縁取られた黒い制服の左胸には、ローズクロス。黒い手袋の大きな手が、煙草を口元に持っていく。露わになった左半面の、鋭く男らしい端整な白晢。
「もみじ?」
 源氏名を呼ばれたのにも気づかず、ラビは表側に歩いてくるとへたり込み、格子を両手で掴んだ。通りかかった男と目が合う。男は歩を緩め、表情は変えずに呆然と見上げるラビを眺めると、そのまま入口から中に入ってきた。
「ちょっと…うちに来たわよ」
「誰?誰を?」
 女たちが浮き立った調子で囁き交わす。見世番と男は言葉を交わし、話がついたのか籬(まがき)越しに見世番が声をはりあげた。
「もみじ、座敷に上がれ」
 女たちのうらやましげな、かつ気の毒げな目に見送られ、ラビは2階に上がった。
 妓楼のならわしでは、初見の客と遊女はまず引付座敷で、遣手(やりて)という遊女のお目付役の女と、廻し方という、部屋を手配したり女たちを客にあてがう男が同席の上、対面が行われ、軽く酒食をとってそれから部屋へ、となる。が、もちろんそんなまだるっこしいことは省略したければすぐ同衾ということも可能だ。
 ラビは廻し方に促され、引付屋敷で待っていたが、廻し方が客を案内して部屋の前を通り過ぎていく気配があり、結局すぐに呼び出された。
 昔は客が混みあっていると、大座敷を衝立で仕切っただけで行われていたというが、今は外国人のために簡単な板壁ではあるが、すべて個室に仕切られている。
 廻し方に案内され、その四畳半ほどの小部屋の1つに、ラビは滑り込んだ。


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 いやはや、いきなり妄想炸裂ですみません前の小説の続きを書き始めて、ラビが遊郭に潜入調査する話だったんだけど設定が中国だったもんだから、今回UPしたような格子越しの再会場面がなくっておもしろくなかったの・・・。単なる遊郭設定萌えです。
 前回と同一設定はクロスもブックマン一族出身ということと、目が怪我のせいじゃないことです。
 タイトルは思いつかなかったので、またエンディング曲から。(仮)タイトルってことで・・・。でも、多分思いつかないまま、これになっちゃうんだろーな
 ・・・しかし、これから書く話のパロみたいな話になっちゃってアホだわ。まだ自分にしかわからないからいーんだけどさ・・・


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4 コメント

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Unknown (時雨)
2009-04-10 21:50:05
続きのup嬉しいです!
なんだか長編になりそうですし、続きが楽しみです!
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Unknown (幸田萬里)
2009-04-11 09:20:33
お待たせしました!…って、待っていてくださったのは時雨さんくらいでしょうけど(涙)
これは前回の話の続きじゃないんですよ~;すみません;全く別のラブラブ設定でございます…。殺伐設定の話の続きは夏にUPできたらいいな~、と。(遅っ)
この話は毎週日曜にUP致します。6回か7回連載になるかな…?よろしければおつきあいくださいませ~v
返信する
Unknown (時雨)
2009-04-11 21:15:58
あれ?
続いてるんだと思ってました><。

設定が似てたんですいません・・・。

でもこのお話も私の好みです!!
多分、幸田さんの文体が好きなのかと気づきました!

そして日曜日更新!
週末の楽しみが増えました、

ありがとうございます。
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Unknown (幸田萬里)
2009-04-11 22:01:49
こちらこそ、まぎらわしくて済みません~;
クロスがブックマン一族だったことと、ラビが幼いうちに出会ってるという設定は、私の中ではどんなクロラビ書くとしても絶対動かせない基本設定なのでございます…!
…よく考えると、これほど原作無視した設定はないよな…;;いいの。それが腐女子の妄想力!(オイッ)
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