( 金木犀 )
金木犀ふりむく季節来てをりぬ 森川光郎
出勤のあゆみを止める金木犀 棚橋澄子
金木犀ふいに抱かれ深呼吸 高橋静子
この恋も金木犀のせゐにせむ 仙田洋子
軽率に句を作るな 高野素十
軽率に句を作るな。嘘を句に作るな。頭の中で句を作るな。
耳に聞ゆることを気取らずにその通り句に作れ。
無心の眼前に風景が去来する。そうして五分,十分,二十分。
眺めている中にようやく心の内に興趣と云ったものが湧いてくる。
その興趣を尚心から離さず捉えて、尚見つめて居る内にはっきり
した印象となる。その印象を始めて句に作る。
(栗田靖著 現代俳句考 先達の言葉より )