６月 ９日

　　　　　　　　　　　　　　　　　百合・笹百合・鬼百合・透し百合・鉄砲百合・山百合・鹿の子百合


　　　　　佐渡の百合海の夕日の色なせり　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　百合咲きていまだ花粉をこぼさざる　　　　　　　　細見綾子


　　　　　バケツに百合煙草を買いに産屋より　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　白百合や息詰めて読む兵の遺書　　　　　　　　　　上杉和雄


　　　　　故郷の山百合庭に開きけり　　　　　　　　　　　　中村たか


　　　　　括られて鬼百合はみな俯ける　　　　　　　　　　　鈴木　文


　　　　　笹百合に風立ち木曽の雨上る　　　　　　　　　　　坪野洋子


　　　　　山腹を覆ひて揺るる百合百花　　　　　　　　　　　横井正子


　　　　　薬屋の百の抽斗百合の花　　　　　　　　　　　　　太田滋子


　　　　　笹百合や工女の碑より飛騨見ゆる　　　　　　　　　長谷川雅子


　　　　　山百合の倒れて花をもたげたる　　　　　　　　　　中山ユキ


　　　　　曲り屋の茅葺屋根に小鬼百合　　　　　　　　　　　山下智子



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　鬼百合に一掬の海残しやる　　　　　　　　　　　　櫂　未知子


　　　　　　　　　　鬼百合の咲いても散ってもめまいくる　　　　　　　松本恭子



　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　鉄砲百合固き莟は天に向く　　　　　　　　　　　　柴田奈美


　　　　　　　　　　朝市へ鉄砲百合を肩抱へ　　　　　　　　　　　　　矢島渚男



　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　山百合の斑や滾々と夜来たる　　　　　　　　　　　奥坂まや


　　　　　　　　　　山百合の茎たくましき崖のふち　　　　　　　　　　福島武蔵



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　鹿の子百合


　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　透かし百合

　
　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　笹百合


　　　　　　　　　　百合讃ふ温室の百合みな聴けり　　　　　　　　　　橋本美代子


　　　　　　　　　　今生のこれも夢なる百合の風　　　　　　　　　　　石塚友二


　　　　　　　　　　庭の百合にほひ来りし時計鳴る　　　　　　　　　　高木晴子