４月 １１日

　　　　　　　　　　　　　　（　　竹の秋・竹の秋風・竹秋　　）



竹秋や女人くぐりし低き門　　　　　　　　　　　　栗田やすし



竹の秋手押ポンプのかすれ水　　　　　　　　　　　細見綾子



竹秋の千の佛に千の黙　　　　　　　　　　　　　　 伊藤白潮



業平の名をもちかなし竹の秋　　　　　　　　　　　 山口青邨



竹秋や耳元に振る嵯峨土鈴　　　　　　　　　　　　都合ナルミ



美術館窓百号の竹の秋　　　　　　　　　　　　　　小長哲郎



竹秋の水の青さよ大井川　　　　　　　　　　　　　上田博子



雨音にしづもる窯場竹の秋　　　　　　　　　　　　伊藤範子



御手洗を囲ふ舟板竹の秋　　　　　　　　　　　　　鈴木みや子



竹炭のにぶきひかりや竹の秋　　　　　　　　　　　柴田孝江



立て膝のねねの座像や竹の秋　　　　　　　　　　　今井和子



竹の秋仏に供ふ千羽鶴　　　　　　　　　　　　　　市川悠遊



集落に残る環濠竹の秋　　　　　　　　　　　　　　安藤幸子



竹秋の雨に柩を送りけり　　　　　　　　　　　　　長江克江



竹秋のさやぎの中に抹茶汲む　　　　　　　　　　　廣島幸子



一草庵背戸に広ごる竹の秋　　　　　　　　　　　　豊田紀久子



竹の秋雨にけぶれる奥嵯峨野　　　　　　　　　　　鈴木　文



門柱に残る校名竹の秋　　　　　　　　　　　　　　栗生晴夫



川音のひびく城址や竹の秋　　　　　　　　　　　　日野圭子



竹秋の雨やはらかや瓊花咲く　　　　　　　　　　　久野和子

４月 １０日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　ミモザの花・花ミモザ　　）


ミモザ咲き遠き母との日を想ふ　　　　　　　　　　栗田やすし



陶房の窓いつぱいにミモザ咲く　　　　　　　　　　下里美恵子



水割りの水にミモザの花雫 　　　　　　　　　　　　草間時彦



ミモザ咲く島に醤油屋佃煮屋 　　　　　　　　　　　谷中隆子



ミモザの黄女子学院のガラス窓　　　　　　　　　　武藤光晴



退院の朝ミモザの咲き始む　　　　　　　　　　　　牧野一古



誕生日瓶にミモザを溢れ挿す　　　　　　　　　　　大嶋福代



町筋に咲き満つミモザ夕茜　　　　　　　　　　　　山下善久



伊豆晴れて海へしだるる花ミモザ　　　　　　　　　金田義子



坂の上にひろごる町や花ミモザ　　　　　　　　　　栗生晴夫



窯小屋の屋根に枝垂るる花ミモザ　　　　　　　　　沢田充子



ミモザ咲く明るき道を赤子見に　　　　　　　　　　長江克江



ゴンドラの花嫁抱ふ花ミモザ　　　　　　　　　　　溝口洋子

４月 ９日

　　　　　　　　　　　　　（　　山吹・八重山吹・濃山吹・面影草　　）



山吹の茎にみなぎり来し青さ 　　　　　　　　　　細見綾子



遠目にも山吹の黄の一重なり 　　　　　　　　　　星野立子



山吹や薪割る妻の一語勢 　　　　　　　　　　　　秋元不死男



大屋根の崩れんばかり濃山吹 　　　　　　　　　　永田耕一郎



濃山吹朝よりひかり招きよす 　　　　　　　　　　柴田白葉女



山吹やほろほろこぼる砥部の里　　　　　　　　　　三井あきを



山吹をゆらして姥の棺出づ　　　　　　　　　　　　八尋樹炎



かんむりに山吹の花稚児の舞　　　　　　　　　　　夏目悦江



能郷へ山吹の花なだれ咲く　　　　　　　　　　　　上田博子



山吹に遍き夕日峠越ゆ　　　　　　　　　　　　　　松本恵子



山吹の檜垣抜け出し一枝かな 　　　　　　　　　　富安風生



あるじよりかな女が見たし濃山吹 　　　　　　　　原 石鼎






　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　



　　　　　　　　　　八重山吹



　　　　　　　　　　



　　　　　　　　　　白山吹（山吹とは別種で山吹は五弁、白山吹は四弁です）



　　　　　　　　　　



　　　　　　　　　　山吹草

４月 ８日 （灌仏会）

　　　　　　　　　　　　　　　　（　　仏生会・灌仏会・降誕祭・花祭　　）



灌仏会ぬぎし草履をふところに 　　　　　　　　　　細見綾子



ぬかづけばわれも善女や仏生会 　　　　　　　　　　杉田久女



わらべらに天かがやきて花祭 　　　　　　　　　　　飯田蛇笏



小柄杓を脇に二寸の甘茶仏　　　　　　　　　　　　丹羽康碩



本堂の裏でピザ焼く仏生会　　　　　　　　　　　　岸本典子



葺きあげて百合のかをりの花御堂　　　　　　　　　福田邦子



柄の反りし小さき柄杓や甘茶汲む　　　　　　　　　小島千鶴



まだぬくき甘茶賜る降誕会　　　　　　　　　　　　中根多子



沙羅の種まきて始まる花祭　　　　　　　　　　　　篠田法子



花まつり釈迦誕生の紙芝居　　　　　　　　　　　　長崎真由美



坊が妻作務衣に残る甘茶の香　　　　　　　　　　　谷口千賀子



甘茶仏注げば御身ひかり出す　　　　　　　　　　　長谷川郁代



黒光る乾く間もなき甘茶仏　　　　　　　　　　　　河村惠光



日溜りに弾む雀や仏生会　　　　　　　　　　　　　山口耕太



旅にして帝釈天に甘茶受く　　　　　　　　　　　　中村たか



幼子の顔より小さき甘茶仏　　　　　　　　　　　　こころ





　　　　　　　　　　　　　　　　

４月 ６日

　　　　　　　　　　　　　（　　スイートピー・にほい豌豆・麝香連理草　　）



スイートピー抱へ米寿の母見舞ふ　　　　　　　　　　　栗田やすし



スイートピーその名ノオトに書きにけり　　　　　　　　細見綾子



眉描いて女給ら貧しスヰートピー 　　　　　　　　　　　富安風生



スイトピー剪りながら手に溢れゆく 　　　　　　　　　　今井千鶴子



試験管並べて活けしスイートピー　　　　　　　　　　　荒深美和子



スイートピー挿す新婚の旅鞄　　　　　　　　　　　　　滝直子



スイートピー回覧板に添へられて　　　　　　　　　　　安藤幸子



黒板の朝の漆黒スイートピー 　　　　　　　　　　　　　片山由美子



仮住の自由不自由スイトピー　　　　　　　　　　　　　 山田弘子

４月 ５日

　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　杏の花・花杏　　）



杏咲き北国人にかぶさる屋根　　　　　　　　　　　細見綾子



オリオンの星座ただしく花杏 　　　　　　　　　　　山口青邨



一村や杏の花にうもれ住み 　　　　　　　　　　　　星野立子



あんず咲く村に小さき消防車　　　　　　　　　　　鈴木みすず



校庭の声空に抜け花あんず　　　　　　　　　　　　金原峰子



花杏ラッパ吹き来る豆腐売り　　　　　　　　　　　伊藤登美江



母なくて庭に杏の花満つる　　　　　　　　　　　　谷口千賀子



杏咲く信濃の地震観測所　　　　　　　　　　　　　高橋　毅



花杏アルプスに向け画架立つる　　　　　　　　　　磯田なつえ



花杏仔牛に角の生え初むる　　　　　　　　　　　　上杉美保子



石屋根の崩れきつたる花杏 　　　　　　　　　　　　加藤秋邨



花杏この道往けば母が居て 　　　　　　　　　　　　中村苑子

４月 ４日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　チューリップ　　）



チューリップ喜びだけを持つてゐる

チューリップの花に息つぎ恋話す 　　　　　　　　　　　細見綾子



湖を前小便小僧チユーリツプ 　　　　　　　　　　　　　阿波野青畝


　　　　　　　　
チューリップ赤きを挿して乙女妻 　　　　　　　　　　　石塚友二



チューリップのみな咲きそろふ日和かな　　　　　　　　利行小波



チューリップチェコの花瓶にあふれしめ　　　　　　　　村崎妙子



幼子の一歩踏み出すチューリップ　　　　　　　　　　　奥山ひろみ



露地裏に三頭身のチューリップ　　　　　　　　　　　　武田明子



ひとつだけつんと横向くチューリップ　　　　　　　　　遠藤齋子



チューリップしばらく蹤いてくる仔犬　　　　　　　　　山　たけし



チューリップつぼむ力のまだありぬ　　　　　　　　　　近藤文子



チューリップ買ひ衷心の鎮まりぬ　　　　　　　　　　　若山智子



チューリップ描きゐる間に開ききる　　　　　　　　　　山本光江



チューリップ散る一片はゴッホの耳 　　　　　　　　　　有馬朗人



死者に咲く賞杯の白チューリップ 　　　　　　　　　　　秋元不死男

４月 ３日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　　>躑躅・白つつじ　　）



黒揚羽来てよりつつじ朱勝ちなり　　　　　　　　細見綾子



口結ぶボイラー守りに緋のつつじ　　　　　　　　沢木欣一



師の生家真実白き庭つつじ　　　　　　　　　　　栗田やすし



松伐りし山のひろさや躑躅咲く 　　　　　　　　　飯田蛇笏



塔見えて躑躅燃えたつ山路かな 　　　　　　　　　阿波野青畝



廃業の味噌蔵暗し白つつじ　　　　　　　　　　　　清水弓月



雨の粒残りし朝の白つつじ　　　　　　　　　　　　中山ユキ



幽霊図見し目にやさし白つつじ　　　　　　　　　　栗田せつ子



九十九折右も左も鬼つつじ　　　　　　　　　　　　山下智子



緋躑躅の芯の甘さよ母遠し　　　　　　　　　　　　武藤光晴



つつじ燃ゆ役行者の修験の地　　　　　　　　　　　平松公代



白つつじ盛りや父の七七忌　　　　　　　　　　　　幸村志保美



戸口までつつじ明りや技芸天　　　　　　　　　　　倉田信子



文人の小さいき机や夕つつじ　　　　　　　　　　　長崎眞由美



　　　　　　


　　　　　　　玄海つつじ


　　　　　　


　　　　　　　蓮華つつじ


　　　　　　今週末より根津神社のつつじ祭りが始まります
　　　　　　

４月 ２日

　　　　　　　　　　　　　（　　石鹸玉・しゃぼん玉　　）



シャボン玉幼な子が息吹きて割る　　　　　　　　　栗田やすし



富士山がみるみるふくれシャボン玉 　　　　　　　　有馬朗人



しやぼん玉吹く母の顔浮むまで　　　　　　　　　　 伊藤白潮



芝草に弾みて消ゆるしやぼん玉　　　　　　　　　　国枝洋子



子どもらが象へ飛ばせり石鹸玉　　　　　　　　　　片山浮葉



花嫁のヴェールに触れししやぼん玉　　　　　　　　鈴木みすず



しやぼん玉弾けし音を聞き漏らす　　　　　　　　　牧田　章



幼くて姉となりしがシャボン玉　　　　　　　　　　夏目隆夫



泣き顔のピエロの方へ石鹸玉　　　　　　　　　　　奥山ひろ子



子の飽きてより父の吹く石鹸玉　　　　　　　　　　渡辺慢房



しやぼん玉園児の声に弾けたり　　　　　　　　　　三井あきを



しやぼん玉追ふ児の大き黒眼かな　　　　　　　　　小島千鶴



青空や瓦礫の上をしやぼん玉　　　　　　　　　　　近藤文子



児の髪に七色はじけしやぼんだま　　　　　　　　　若山智子



しやぼん玉三角点に弾けたり　　　　　　　　　　　長谷川郁子



退院の延びし子と吹くシャボン玉　　　　　　　　　二村美伽