3月 12日

　　　　　　　　　　　　　　　草餅・蓬餅・草団子・母子餅




　　　　　草餅を焼く金網をよく炙り　　　　　　　　　　栗田やすし




　　　　　草餅の黄な粉をこぼす毛越寺　　　　　　　　　細見綾子




　　　　　ふるさとの草餅母の指のあと　　　　　　　　　金原峰子




　　　　　老い母の尽きぬ話や草の餅　　　　　　　　　　矢野孝子




　　　　　円空の寺に草餅焼く匂ひ　　　　　　　　　　　林　尉江




　　　　　柴又や殊に色濃き草団子　　　　　　　　　　　伊藤克江




　　　　　生き生きと老い草餅を二つ食べ　　　　　　　　櫻井幹郎




　　　　　家毎に祀る地蔵や草の餅　　　　　　　　　　　磯田なつえ




　　　　　草餅に伊吹の蓬搗きこめる　　　　　　　　　　清水弓月



　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　

3月 11日

　　　　　　　　　　　　　　　　　東日本震災忌


　8年前の2011年3月11日午後2時46分でした
　多くの死者・行方不明者を出した大震災忌日です
　あらためて心よりご冥福をお祈りいたします
　その日の事は2011年3月12日のこのブログをご覧ください


　　　　　赤すぎるバラ東北の震災忌　　　　　　　　　　　　栗田やすし




　　　　　起き抜けのめまひ東北震災忌　　　　　　　　　　　国枝隆生




　　　　　東日本大震災忌地虫出づ　　　　　　　　　　　　　山本悦子




　　　　　はくれんの空の青さよ東北忌　　　　　　　　　　　熊沢和代




　　　　　地震激し沈丁の香に立ちつくす

　　　　　春寒の地を突き上ぐる余震なほ

　　　　　黄水仙われも余震に揺れゐたり　

　　　　　料峭の歩くほなかき地震月夜

　　　　　春寒し身ぬちに残る地震のゆれ　　　　　　　　　　こころ　　　　　

　　　
　　　　　




　　　　　

3月 10日

　　　　　　　　　　　　　　　　蓬（よもぎ）・餅草・艾草・蓬摘む




　　　　　搗き終へし杵にほのかや蓬の香　　　　　　　　　栗田やすし




　　　　　西行庵十歩離れずよもぎ摘む　　　　　　　　　　細見綾子




　　　　　ペーチカに蓬燃やせば蓬の香 　　　　　　　　　　沢木欣一




　　　　　庭先の餅草摘める夕べかな　　　　　　　　　　　矢野愛乃




　　　　　道草を刈るや蓬の匂ひけり　　　　　　　　　　　夏目隆夫




　　　　　古里の土手やはらかし蓬の芽　　　　　　　　　　菊山静枝




　　　　　身妊りし子とゆく土手や蓬萌ゆ　　　　　　　　　吉岡やす子




　　　　　初瀬川土手の餅草香り濃し　　　　　　　　　　　廣島幸子




　　　　　地震跡に山の日射しや蓬摘む　　　　　　　　　　金原峰子




　　　　　エプロンにくるむ蓬の匂ひ濃し　　　　　　　　　玉井美智子


　　　　　

3月 9日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　チューリップ




　　　　　チューリップ喜びだけを持つてゐる


　　　　　チユーリツプ一つ離してさびしからず　　　　


　　　　　チューリップの花に息つぎ恋話す　　　　　　　　細見綾子




　　　　　チューリップ描きゐる間に開ききる　　　　　　　　山本光江




　　　　　幼子の一歩踏み出すチューリップ　　　　　　　　　奥山ひろみ




　　　　　露地裏に三頭身のチューリップ　　　　　　　　　　武田明子




　　　　　ひとつだけつんと横向くチューリップ　　　　　　　遠藤齋子




　　　　　チューリップのみな咲きそろふ日和かな　　　　　　利行小波




　　　　　チューリップチェコの花瓶にあふれしめ　　　　　　村崎妙子




　　　　　チューリップ買ひ衷心の鎮まりぬ　　　　　　　　　若山智子




　　　　　チューリップつぼむ力のまだありぬ　　　　　　　　近藤文子




　　　　　チューリップしばらく蹤いてくる仔犬　　　　　　　山　たけし




　　　　　



　　　　　

3月 8日

　　　　　　　　　　　　　　　　　すかんぽ・酸模・すいすい




　　　　　高館に長きすかんぽ折りたるよ 　　　　　　　　　細見綾子




　　　　　すかんぽやひがな水鳴る母の里　　　　　　　　　　下里美恵子




　　　　　すかんぽの紅きざす風古戦場　　　　　　　　　　　上杉美保子




　　　　　すかんぽの土手に干さるる狸皮　　　　　　　　　　国枝洋子




　　　　　花すいば鉄砲狭間の高さなる　　　　　　　　　　　石原進子




　　　　　すかんぽや湖北の奥の船着き場　　　　　　　　　　安藤幸子




　　　　　すかんぽや首を傾げし六地蔵　　　　　　　　　　　山田悦三




　　　　　友の訃に土手の酸葉を噛み歩く　　　　　　　　　　松永敏江




　　　　　すかんぽを食む木曽馬の長睫　　　　　　　　　　　平松公代

3月 7日

　　　　　　　　　　　　　　　　　片栗・堅香子の花・かたつこ




　　　　　かたかごの花のさゞなみ青空へ　　　　　　　　　沢木欣一




　　　　　足のべて休む片栗の花あらば　　　　　　　　　　細見綾子




　　　　　かたくりの一寸出でてうつむけり　　　　　　　　片山浮葉




　　　　　捨て窯の際に片栗群れ咲けり　　　　　　　　　　熊澤和代




　　　　　片栗の花を食べよと朝市女　　　　　　　　　　　栗田せつ子




　　　　　木漏れ日や片栗の花反り返る　　　　　　　　　　花田紀美子




　　　　　かたくりの閉ぢて西より雨もよひ　　　　　　　　山　たけし




　　　　　日の差してかたくりの花震へづめ　　　　　　　　生川靖子




　　　　　かたかごの花に雨雲低く垂る　　　　　　　　　　倉田信子




　　　　　堅香子や土間三畳の流刑小屋　　　　　　　　　　安藤一紀




　　　　　薄ら日を纏ひかたくり咲きそろふ　　　　　　　　玉井美智子




　　　　　　　　　　

3月 6日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　啓蟄




　　　　　啓蟄や天使の声のひきがへる　　　　　　　　　沢木欣一




　　　　　啓蟄や土塊指間よりこぼる　　　　　　　　　　栗田やすし




　　　　　啓蟄や野菜サラダを山盛に　　　　　　　　　　河原地英武




　　　　　籠を編むひご啓蟄の地に撓ふ　　　　　　　　　都合ナルミ




　　　　　啓蟄や妻還暦のクラス会　　　　　　　　　　　佐藤とみお




　　　　　啓蟄や剃刀で剥ぐ足の胼胝　　　　　　　　　　武田稜子




　　　　　啓蟄の土靴底に郵便夫　　　　　　　　　　　　奥山ひろ子




　　　　　調教の鞭啓蟄の地を打てる　　　　　　　　　　矢野孝子




　　　　　啓蟄や鳩とび出して時計鳴り　　　　　　　　　矢崎富子




　　　　　啓蟄やギブスのとれし足洗ふ　　　　　　　　　山本悦子




　　　　　啓蟄や掘り抜き井戸に水溢れ　　　　　　　　　伊藤旅遊



　　　　　



　　　　　啓蟄の池の底より泡ひとつ


　　　　　☆　今日掲題の写真　二輪草の双葉が顔を出しました

3月 5日

　　　　　　　　　　　　　蝌蚪の紐・おたまじゃくし・蛙の子




　　　　　棒切れで妻がつつけり蝌蚪の紐　　　　　　　　　栗田やすし




　　　　　おたまじゃくし睡蓮の葉に乗ることも　　　　　　細見綾子




　　　　　蝌蚪の陣金剛杖ではげませり　　　　　　　　　　沢木欣一




　　　　　蝌蚪の紐ひかりのなかにゆるびをり　　　　　　　谷口千賀子




　　　　　蝌蚪の群日溜りの池埋め尽くす　　　　　　　　　武藤光晴




　　　　　蝌蚪の水顔寄せ合ふて覗き込む　　　　　　　　　横井美音




　　　　　両の手にひやりと重し蝌蚪の紐　　　　　　　　　鈴木みすず




　　　　　湧水に蝌蚪ひしめけり隠れ里　　　　　　　　　　倉田信子




　　　　　手の窪にお玉杓子を泳がする　　　　　　　　　　福田邦子




　　　　　蝌蚪の水跳んで足裏のむず痒し　　　　　　　　　大嶋福代




　　　　　少年ににきびや恋や蝌蚪に足　　　　　　　　　　斉藤眞人




　　　　　首洗ひ池に絡まる蝌蚪の紐　　　　　　　　　　　幸村志保美




　　　　　
　　　　　



　　　　　八雲の居おたまじやくしの堀に沿ふ　　　　　　　 阿波野青畝


　　　　　蝌蚪の紐じゆげむじゆげむと続きをり 　　　　　　鍵和田釉子

3月 4日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　猫柳・えのころ柳




　　　　　来て見ればほゝけちらして猫柳　　　　　　　　　細見綾子




　　　　　鵜蹟に下りやはらかき猫柳　　　　　　　　　　　栗田やすし




　　　　　芦ノ湖の水ひたひたと猫柳　　　　　　　　　　　夏目隆夫




　　　　　引き売りの荷に猫柳一抱へ　　　　　　　　　　　山下智子




　　　　　白壁の土蔵住ひや猫柳　　　　　　　　　　　　　水野時子




　　　　　猫柳川はひかりを流しをり　　　　　　　　　　　丹羽一橋




　　　　　ねこやなぎ活けて如庵の静もれり　　　　　　　　石原進子




　　　　　毛先まで光あつめし猫柳　　　　　　　　　　　　高岸弘子




　　　　　猫柳ほほけ野川の水嵩む　　　　　　　　　　　　荻野文子




　　　　　




　　　　　 ぎんねずに朱ヶのさばしる猫柳 　　　　　　　　　飯田蛇笏


　　　　　ときをりの水のささやき猫柳 　　　　　　　　　　中村汀女


　　　　　猫柳呆けて天の青き見ず 　　　　　　　　　　　　加藤楸邨　　　　　

3月 3日

　　　　　　　　　　　　　　ひな祭り・雛の日・桃の日・桃の節句・上巳（じようし）の節句




　　　　　窓際に産着干したる雛の間　　　　　　　　　　河原地英武




　　　　　雪の底眼を病む母や雛祭　　　　　　　　　　　沢木欣一




　　　　　雛の日に秩父自ねんじょすりおろす　　　　　　細見綾子




　　　　　月光に雨戸を閉ざす雛の部屋　　　　　　　　　栗田やすし




　　　　　この明り消せば雛と一つ闇　　　　　　　　　　梅田　葵




　　　　　母とゐて桃の日の風やはらかし　　　　　　　　栗田せつ子




　　　　　紙雛に髪の細さの眉描く　　　　　　　　　　　丹羽康碩




　　　　　出目金の宇宙遊泳吊し雛　　　　　　　　　　　鈴木みすず




　　　　　土雛の歌舞伎役者が上段に　　　　　　　　　　鈴木英子




　　　　　長槍を桁に陣屋の雛まつり　　　　　　　　　　神尾朴水




　　　　　雛の魂抜く時僧の声つよし　　　　　　　　　　磯田なつえ




　　　　　桃の日や人形串（ひとがたぐし）で身を拭ふ　　生田美貴子




　　　　　酒造屋の土間百条の吊し雛　　　　　　　　　　兼松　秀





　　　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　狆曳官女