土に返す 生ごみ減へ施設改修
北広島市が注目したのは石川県珠洲市。能登半島の先端にあり、同県内10市の中では人口が最も少ない約1万7千人の観光と農業の町だ。同市は下水にし尿と生ごみを合わせ、同時に処理する先進的な施設を一昨年8月から、本格的に稼動させた。既存の下水処理施設を改修することで初期投資を削減し、分解過程で発生するメタンガスは汚泥を乾燥させるボイラ-燃料として再利用し、運転コストを抑えている。さらに処理後の残りかすを肥料として使うことで循環型のモデルを構築する、全国初の試みだ。微生物による分解過程で出たメタンガスが順調に回収、再利用されているのを目の当りにした北広島市環境部の村上精志参事は「北広島が目指す施設とほぼ同じ。これまでの下水に加え、生ごみの受け入れ方を確立すれば実現可能だ」と自信を深めた。北広島市では毎年2回、家庭から出されたごみを調査している。生ごみは、無作為抽出した2百㌔、のうち、重量換算で約4割を占めた。市廃棄物対策課は「生ごみがなくなれば、埋め立て地の延命はもちろん、埋め立て地の近隣住民から苦情が多いカラスが減ります」とメリットを強調する。生ごみを下水と一緒に分解処理した場合、メタンガスの発生量は、生ごみ1㌧あたり120立方㍍と試算される。下水処理の約6倍にあたり、現在、追い炊き用に使っている年間130㌔㍑分の重油(約900万円相当)が節約できコスト削減が見込まれる。北広島市にとって、メタンガスの再利用は下水処理施設で経験済み。生ごみを破砕選別する施設と、微生物による分解のための消化槽を増設するだけでよい。「建設コストは珠洲市より安価。後は微生物が生ごみを、分解してくれるか、テストを行うだけです」(同課)。新しい施設は2011年稼動する予定だ。「北広島は農村から発展した町。以前から“土に返す”という考え方があったことが、バイオガス化を導入しようとする原動力となっている。特産品がないと言われるが、環境問題に取り組む先進的な町として全国に発信していきたい」。村上参事は力を込めて話した。