適度な脂身柔らか黒毛 和牛で知られる日高管内平取町が、豚肉でも注目されつつある。生産農家は4戸と少ないものの、付加価値の高い黒豚や放牧豚の飼育に取り組んでいる。出荷額も年々増加。料理で使う豚肉を町内産黒豚に切り替えた食堂もあり、関係者は「平取を豚肉のマチに」と意気込む。
町役場から車で3分。同町荷菜の黒豚生産者、大坪一寿さん(47)の豚舎を見せてもらった。高さ1㍍、3㍍四方の囲いが20ヵ所あり、軟らかそうな黒毛の豚が10頭ずつ、動き回っていた。大きいもので体調1㍍、体重は120㌔もある。同町内では昔から白豚を飼う農家があったが、黒豚飼育は1989年に大坪さんらが導入したのが始まり。適度な歯応えと柔らかさを併せ持つ肉質と、くどさのない脂が特長で、白豚より5割は高く売れる。大坪さんは07年から黒豚一本にしぼり、昨年は約800頭を販売した。黒豚は体に脂肪がつきやすく、適度な脂身を保つためには飼料の調整が欠かせない。出荷は生後8カ月で、白豚より2ヵ月長い。手間がかかるので価格が高いが、「食べれば味の違いが分かる。『びらとり和牛』のようなブランドに近づけたい」と大坪さん。
肉質締まる放牧も
荷菜から南に約4㌔。雪に覆われた丘陵地では100頭近い豚が走ったり、鼻で雪面を掘ったりしていた。同町川向の池田英作さん(75)、浩之さん(45)父子は町内で唯1、白豚の放牧を手がける。浩之さんは「放し飼いだからストレスがない」と話す。軽種馬の生産をしていたが馬の販売が不振となり、06年から豚専業に切り替えた。放牧用地は計6㌶。肥育豚舎と草地を結ぶ扉は開けており、豚は自由に往来できる。生後4ヵ月目から放牧し、同7、8カ月で出荷。締まりのある肉質でハムやソ-セ-ジにも向く。精肉の価格は通常の豚舎で飼う白豚より5割ほど高く、昨年は約1700頭を販売した。JA平取町によると、昨年の豚の出荷は4戸で計約3200頭、約1億3千万円。出荷額は2000年以来、最高だった。
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「味処いこい」(同町本町、℡01457・2・2448)は昨年6月、とんかつ定食(1200円)や焼肉定食(1400円)などに使う豚肉をすべて、白豚から大坪さんの黒豚に変えた。原価は15%上がったが、店主の高橋秀忠さん(63)は「地産地消を広めたい」と料理の価格を据え置いた。次女の育子さん(28)に焼き肉の調理法を聞いた。ロ-スの両面に焼き色をつけて一口大に切り、赤ワインを加え弱火で2分、火を止め余熱で1分温め、塩コショウする。黒豚のコクと脂の甘さが楽しめる。黒豚料理は同町ニ風谷の「びらとり温泉」℡01457・2・3280)でも食べられる。黒豚の精肉は、同温泉やイト-ヨ-カド-札幌店(札幌市東区)などで、放牧豚は食肉加工販売ファ-マ-ズジャパン(℡011・889・2333)で買える。