デービット・アトキンソンが『イギリス人アナリスト日本の国宝を守る』という本を出したので、早速読んでみた。本の中で日本の経営者にはサイエンスが無いと繰り返し主張しているのだが、その主張自体にも然程サイエンスがあるとは思えなかった。ゴールドマン・サックスでパートナーにまで上り詰めたという実績を誇りたい気持ちはわかるのだが、この本の装丁と同じように軽い中身にしか思えなかった。この講談社+α新書というのはこの手のものが多い。読んでいて落語の「小言念仏」を聴いているような心持ちになった。これ以上特に書くこともないのだが、これで終わると私のほうも小言念仏なので、一応章立てくらいは紹介しておくべきだろう。
はじめに ゴールドマン・サックスのイギリス人アナリストが、日本の伝統文化を守る会社の社長になった理由
肝心の「理由」がよくわからない。「はじめに」の割にはページ数を多く割いている。内容は徒然なるままの自己紹介のようなもの。
第1章 外国人が理解できない「ミステリアスジャパニーズ現象」
特に目新しいことが書かれているわけではない。著者が言いたいことも「ミステリアス」。
第2章 日本の「効率の悪さ」を改善する方法
何がどう「効率の悪さ」なのか、ということが結局よくわからない。
第3章 日本の経営者には「サイエンス」が足りない
書いてあることにも「サイエンス」が足りない
第4章 日本は本当に「おもてなし」が得意なのか
箱根の旅館とクレジットカードの再発行手続きのことで「おもてなし」云々を言われてもねぇ、という感じ。
第5章 「文化財保護」で日本はまだまだ成長できる
ここからがようやく本題かと思いきや、残すところ40ページしかない。本題はその程度の内容ということでもある。
第6章 「観光立国」日本が真の経済復活を果たす
要するにイギリスを見習えということらしいのだが、あれで経済が復活していると言えるのかという素朴な疑問を抱くのは私だけだろうか。
おわりに
これだけですか、という感じ。
ただ、与太話として聞く分には違和感はない。御説御尤と思えることばかりだった。結局、私のほうも小言念仏のようになってしまった。お互い様だ。