熊本レポート

文字の裏に事件あり

地方議会の壊死 第二回・誤ちを合法化した菊池市議会の遵法

2013-12-17 | 社会・経済
 政治家は議員バッヂを付けてナンボの世界。とはいえ、議員立法をもって後世に遺す施策を執行部に実行させるわけでもなく、マスコミから注目されるほどの調査能力を発揮し、執行部の過ちを鋭い指摘で軌道修正させるわけでもないとなると、厚化粧の容姿か薄っぺらの芝居で情を買っての四年間の生活保障とはいえないか。
 公金が絡む法人の発注契約を含めて、公的機関による売買、賃貸及び請負その他の契約については「性質的に競争を許さない場合と緊急を要する場合」を除き、そこには公告しての競争入札を要する(会計法第29条の3)。そして、そこには公正な実施が求められる。
 特別的な関係を有する業者への発注を意図として、その業者が目的の遂行をもって談合の可能な業者だけを代行指名し、十五年以上も思惑通りの発注契約を結ぶなど違法なのだが、こうした例を挙げるまでもなく、コンプライアンス(遵法)に最も欠けるのはその管理、監督の自治行政。
 その地方自治体が国の施策において推進してきたのが、「デジタル防災行政無線(同報系)の統合整備」。アナログ400MHz帯で満足する移動系防災無線があるにも拘わらず、なぜ何億円も経けて260MHz帯のデジタル化が必要なのかとか、何10億円も投下して28年5月までに消防救急無線のデジタル化を急ぐ理由とは何かなど、当該の自治体からも疑問の声は挙がるが、その整備に入っても上天草、山鹿市議会でも発注に関して疑問の声が出た。
 ところが大方の自治体には、こうした事業計画における十分な理解者は少なく、膨大な金額の事業にも拘らず、メーカーとコンサルタントの思惑に極一部の者が加担して、この三者で冒頭の会計法第29条の3が棚に上げられるというケースも少なくはない。
 その一例が菊池市、同議会である。再々の繰り返しになるが、性能や技術的にパナソニックや富士通よりもNECの機器、設備が劣るという話ではなく入札、発注における問題点で会計法上の疑惑。
 発注側に突き付けられるコンプライアンスの問題である。
 なぜ疑惑が発生するのか、というと当然、そこには膨大な事業費が絡むという利害関係にある。
 ところが先述の三者の中で、最もコンプライアンスに敏感なのはメーカー。市場3・3兆円の世界といわれ、15億円規模で年間330億円規模の行政無線市場から外されるとなると、無法の独走に緊張するのは当然。
 しかし残りの二者の談合が成立するとなると、そこには極めて強硬な社会正義でも発生しない限り阻止は無理だといえる。強硬な社会正義と例えたが、実は極当たり前の責任と義務であって、それが盲判的な自治、議会であれば当然な不始末となる。
 隣接の他二市でもいえるが、菊池市も同整備計画のコンサルタントは電子技術応用(立山則生代表・菊池市泗水町吉富)。

P5_4 同社の人事構成に「元NEC社員が存在」(某メーカー談)という話もあるが長年、同社が同市旧泗水町、七城町でNECによる機器、設備(既設の防災無線機器)のメンテナンス業務を請け負ってきたのは事実で、NECと同社は長期的な親子の事業取引関係にある。その主従関係から何が想定されるか、それが懸念される第一の問題点。そして後述もするが、同市にもそれを承知していた専門職がいた。菊池市はメーカーへの発注へ向けた入札の際、その入札参加条件として他事業と同じく「本工事の設計業務等の受託者と資本若しくは人事面で関連のないこと」を明記。
 他二市とは違って、当該地での長期的な取引関係が上に担当、もしくは順当するか否かの判断となるが、公共工事の発注にはより公正さが求めれらるという趣旨からだと、「NECの除外」は明らかに判断以前の正論。
 そして先述の通り、菊池市にも事前に右を承知していた職員が存在。その懸念が却下されたとなると、同内部にその疑惑を却下するだけの権限を有する者がいたと想定されるのではないか。そこに直ぐ「利権」が存在と断定するのではないが、歪んだボランティアの実行者が確かに存在した。
 第二番目の疑惑は、「仕様書におけるNECへの絞り込み」である。
 推進された県内の防災行政無線を振り返るとNTT、九電工等の工事業者へ発注され、設計と仕様書に沿って機器。設備等については各メーカーから購入という事例も多い。
 メーカー発注となれば、メーカーを中心に介入する者には、競争する工事会社の下請け選択まで魅力となるが、仮にメーカー発注の場合も善し悪しはともかく、不足の機器は他社からの購入という策で補った。
 ところが菊池市の場合、入札参加条件として「自ら製造しているもの」とした…。
 電子技術応用が作成した仕様書には、主要機器の中で「18GHz帯の機器」を指定。この18GHz帯の機器というのは東芝、三菱電機、沖電気工業、パナソニック、NEC、日立国際電気、富士通の大手七社の中で自ら製造しているのはNECの一社。

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 そこに従来の整備事業とは異なって、「他社(NEC)からの購入禁止」(自ら製造しているもの)と入札条件が限定されると、これは「発注先(NECへ)の絞り込み」であり、これで果た
して公正な入札が行われたといえるかどうか。一般市民でもこれは判断が可能とはいえないか。
 だが、菊池市議会は「違法に相当する疑惑を合法化」して契約を承認。内部において仮に三者の一者が存在していたとしても、この盲判議会は同罪で、菊池市議会への信頼を失わせたばかりでなく、地域社会での社会正義の危うさを青少年まで見せたともいえる。
 もちろん入札の戻しとなると、補助金の繰り越しだけでなく、膨大な市場への影響から「どんでん返しでの受注」という汚名を懸念し、NEC以外のメーカーからも敬遠されるという予想も浮上して、困難な事態が想定されたのも確か。
 しかし自治体がバックボーンとするのは遵法であって、その責任所在は明らかにし、そこにペネルティを科する必要はある。それまで避けるとなると最早、それは菊池市、同議会の壊死ということにはならないか…。