熊本レポート

文字の裏に事件あり

廃業補償、随契での緑化整備に産廃施設、そして住民の防災は二の次で仮払い跡地整備まで出たくまモン県 採石問題  第3回

2017-07-10 | 日記

 10数年前、阿蘇山を削り落として、国立公園を造形したまま放置している採石場跡地(阿蘇市豆塚)について取材した際、「熊日(地元紙)でも取り上げないのに『採石場跡地の未整備』とは何だ」と、熊本商工観光労働部の担当課から意外なコメントが漏れ出た。だから、というわけではないが、未だ熊本県の採石場跡地(上天草、天草、山鹿、阿蘇市)は未整備状態。
 採石場跡地整備は採石法に基づき自己責任となるが、熊本県はその過程で廃業補償約1億円を支払い、後の整備費に約7000万円を公費から支出し、それによって普通なら緑化整備の行われるところを何と「産業廃棄物の保管施設」で認めた。
 業界と何らかの利害関係にあって、また行政の推進を錦の御旗に掲げる与党議員はともかく、「県民の代表として自治行政のチェック機能を果たす」と約束した県議会の野党議員らが、地元紙と同じく「初耳」と自ら馬耳東風の怠慢さを認めると、「任期中に何に務め、何を成したか」と問う以前に「不要なる7議員」という以外に並べる言葉はない。年間約1億1千万円の無駄であるが、その責任は彼らに投票、支持した県民、団体にある。
 今回の九州北部における豪雨もそうだが、住民や地域社会に甚大な被害をもたらす災害は、熊本震災で思い知らされたように前触れもなくやってくる。
 ところが熊本県議会(経済環境常任委員会)は平成27年12月、九州北部豪雨(平成24年7月)で土砂崩れや浸水被害に見舞われ、「採石場の貯水池」(約40万立方メートル)が崩壊することを懸念した阿蘇市車帰の住民に対して、「終掘後(採石終了)の2年後(平成31年以降)に埋め戻す」と回答。危機管理が問題となる昨今、温厚な住民には「のんびりと対応」と3年間も棚上げにしたわけだ。仮に3年の間に懸念する事態が発生した場合、その責任を誰が負うのか、となるが、災害よりその責任を第一に避けようとするのが彼らである。
 次に問題なのは、埋め戻しが公費での工事となる点。
「法に基づく国(経済産業省)の指導(自己責任)、他県での跡地整備と異なるが・・・」
 この素朴な疑問に対して、県エネルギー政策課が次のように答えた。
「県の代払い事業で、後々その事業費は該当業者から徴収する」
 会計法での処理は、という疑問も発生するが、そもそも代替え支出の回収など念頭にないといえる。その上に同工事を前例のように該当業者に随契で発注すると、同業者には二倍の利益が発生することになる。
 業者の跡地整備が2年も放置されると、その責任は自治行政ということになるが、途中を省略しての行程と簡単に納得の出来ないのは確か。
 該当地域の住民から不安視されている跡地整備には排水路の工事も加わるが、採石に当たっては防災、治水等の環境整備に努めるとなっている以上、その更新期においてはもちろん、県行政における指導、監督の怠慢が生んだ結果というのが現状。これでは業者を責められない背景も理解されれが、それを県民の税金で片付けるというのだから非論理的というか滅茶苦茶な自治行政。しかも無駄な報酬を受け取っているとしか想定されない野党議員らが、自分の非を隠してチェック機能を果たせるわけがなく、実に上手く出来ている負の構造ではある。
 経済産業省(資源エネルギー庁)は「そもそもベンチカットそのものは平成11年以前からも採石工法と存在していたわけで防災、環境整備に努めながら採石を行うことは当然。仮にそれを怠り、ベンチカットには間に合わないとの理由で真壁で残すというのは屁理屈。真壁で安全とはいっても、周辺の樹木や草に適応した環境整備はどうなのか。まして該当地は国立公園」と語るが、そこで「ラス張工による岩盤緑化整備」が浮上。
 緑化整備は周辺の草木、樹木を考慮して、それに適合した整備が求められているが、直壁にラス網を張り、真壁に穴を掘り、そこに草や樹木の種子、肥料等を埋め込んで岩盤緑化に努める工法がある。
 野党県議辺りから「森友、加計学園の問題と一緒で、結果は我々と同じく批判で終わる」という声の挙がるのを予想して、これから他県での防災、治水、周辺環境に努めながら採石するとした指導、そして自己責任による跡地整備、工法等を紹介しながら是正への道を示すことで、その反論に応える・・・。(つづく)