男女雇用機会均等法の完全実施など職場における平等が叫ばれている中、立憲民主党の辻元清美議員なら大喝采の「職場における職務級の撤廃」を自主的に推進している一部行政事務組合が現れた。
それは阿蘇市郡のごみ焼却等の環境行政、養護老人ホームを運営、管理する阿蘇広域行政事務組合(井野智光局長・阿蘇市跡ヶ瀬177番地)。
自主的に推進と言ったのは、その状況を阿蘇市、小国、高森町、南阿蘇村等の関係議員が全く承知していない点にあって、その良し悪しは後に残すとして、それはこれで明らかに役務としての彼らの怠慢。
この話は同組合が運営、管理する養護老人ホームにおける複数の入所者、家族による投書、談話に始まった。
「入所者の金銭を技能労務職員に預けさせていたが問題はないのか」
という問い合わせに始まり、それが準備でもしていたかのように現地で、その周辺から複数の「問題ではないか」という声が挙がった。
これについて井野局長は「相談員だから問題なし」と応えたが2019年、同組合の老人福祉施設では、職員が入所者の預金600万円を着服するという事件が発生。元入所者らの家族から挙がった疑問の声は、この事件を振り返っての懸念が背景。
地方自治法特別地方公共団体編において、「預り金は誰が保管するか」など定められておらず、誰でも良いという解釈になるが、もちろん総務省及び熊本県町村課の一部行政事務組合担当は、「施設の責任として預かる」と揃って同じ見解を示した。
それでは、その「施設として責任ある職」となるが、人吉球磨広域行政事務組合は同様な施設での同じ問題について「会計担当の行政職が預り金担当」と回答し、菊池市の老後介護施設では「トラブルが懸念され預り金はなしとしている。ただ一般論ながら行政職以外の職員が預り金を担当するなど聞いた事がない」と語った。
後になったが、行政職と技能労務職とは何かであるが、簡単に説明すると行政職とは市町村が統一して実施する試験を経て採用される専門職を中心とした職員であり、技能労務職員とは事務組合が単独で採用し、表現は悪いが「行政職担当外の単純業務を職務」とする。
すなわち、ここまでの問題提起はこの点で、「単純作業の技能労務職員が行政職員を超えて現場の責任者と成り得るか」という問題。
ところが、阿蘇広域事務組合における施設の該当する技能労務職員は、単なる単純作業の職員どころか、施設No2の職責にあった。これが、井野局長の語った「相談員だから問題なし」である。
施設の相談員とは、施設長が不在の場合、「施設長」の役割を果たす必要がある。また施設入所の要である「処遇計画」の作成と調整の業務があるなど、高度の知識と経験が求められる。
実はこの問題の本当の論点は、この「技能労務職」からの行政職トップに次ぐ「相談員」への昇格にある(ただし、同施設では相談員二人制を執行)。
技能労務職員の場合は、一般的に行政職の採用とは異なり、現場採用(一部組合等の雇用)となる。この極めて稀、いや周辺では存在しない、技能労務職から行政職らを超えての施設No2への昇格は、下衆の勘繰りからの芸能界流行りの情実か、それとも当初から想定した素質、努力を見抜いての局長による大英断、大抜擢なのか。それを見極めるのが住民の疑問に遅ればせながら応える関係議員の務めであるが、施設側も技能労務職から行政職への職種変更試験を実施していたら、こうした問題も浮上しなかったのは確か・・・。