万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ギリシャ救済―EUが抱える新たなジレンマ

2010年02月22日 15時30分52秒 | 国際経済
ギリシャ救済、負担額3兆円も=ユーロ圏全体で-独誌(時事通信) - goo ニュース
 ギリシャの経済危機が表面化して以来、EUは、ギリシャを救うか、ユーロの価値を維持するのかという、難しい選択を迫られてきました。言い換えますと、ギリシャを救えばユーロそのものの信頼性が著しく低下するという、深刻なジレンマに陥っていたのです。

 そもそもECBは、条約において、個別の加盟国政府の財政危機を救済するために、国債を引き受けたり、特別融資を行うことを禁じられており、この制約がある限り、金融政策でギリシャを救うことは無理なことでした。アメリカのドルのように国力が通貨価値を支えているわけではありませんので、共通通貨としてのユーロの信頼性は、加盟国の財政規律に大きく依存しているのです。このため、ECBの設立に際して、厳格な財政規律を定めた協定まで締結し、欧州委員会に監視等の権限まで付与しました。

 本日のニュースを読みますと、EUは、金融政策によるギリシャ救済を諦めて、加盟国に奉加帳をまわして、直接に財政支援を行う方法を検討しているようです。金融政策から財政政策へ、ということになりますが、今度は、モラル・ハザードと負担の不均衡いう別のジレンマに直面しそうなのです。最善の解決方法は、ギリシャ経済の立て直しなのでしょうが、EUが、どのようにしてこの難しい局面を脱するのか、注目されるところなのです。

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