万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

時代に逆行する日中歴史共同研究

2010年02月02日 15時41分45秒 | 日本政治
日中歴史共同研究 教科書に影響も 「盧溝橋事件」「南京事件」歩み寄り(産経新聞) - goo ニュース
 日中歴史共同研究では、日本側の中国側への歩み寄りが随所に見られたと言います。”未来志向”のはずが、共同研究が進めば進むほど、我が国もまた、過去の時代にタイム・スリップしいそうなのです。

 そもそも、日中の間では、歴史そのものに対する捉え方が違っています。大陸の歴代王朝が、前王朝の史書を編纂してきたように、歴史とは、時の権力者が自己の正当性を主張するために編まれたものです。自己正当化が目的なのですから、歴史研究は、政治的な配慮によって、常に曲げられる運命にあります。現在、中国は共産党政権ですので、歴史もまた、共産党に都合がよいように歪曲されているのです。一方、近現代の歴史学は、政治とは距離を置き、客観的な立場からの実証研究が重要視されるようになりました。我が国の立場も後者にあり、学問の自由の下で、様々な角度からの歴史研究がなされています。

 今ではマルクス史観も一つの見解に過ぎず、中国の歴史研究の態度は、過去の遺物とも言えます。にもかかわらず、日本国政府が、中国に歩み寄るとしますと、自らも過去の世界に足を踏み入れることになってしまうのではないでしょうか。日中共同研究の報告書は、決して”国定”と見なしてはならず、反証可能なひとつの見解として捉えるべきと思うのです。

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