万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

製造業の危機―日本国政府の周回遅れの愚策

2011年10月16日 15時54分39秒 | 日本経済
産業空洞化 カギは国内拠点の維持(産経新聞) - goo ニュース
 現在、日本国は、超円高によるマイナス影響に苦しんでいます。その一方で、超円高を海外企業のM&Aに利用すれば、この危機は乗り切れるとする意見も聞かれます。しかしながら、大震災という未曽有の惨事を考慮しますと、この危機は、相当に深刻なのではないかと思うのです。

 海外企業のM&Aは否定すべきことでもなく、超円高や震災がなくとも、実際に、日系企業はM&Aを増やしていきました。このため、海外雇用者数も増え、企業収益がアップする要因ともなっており、国内でも、震災前の労働統計の推移には、卸売、小売り、宿泊業、飲食業などのサービス業における雇用の増加は見られました。しかしながら、問題は製造業にあります。製造業の就業者数は一貫して減少傾向にあったのですが、ここにきて、大震災と超円高に同時に襲われたのですから、この減少に拍車がかかる可能性が俄かに高まったのです。被災した企業は、国内に製造拠点を維持するかどうか分からず(廃業を選択する事業者もあるらしい…)、諸外国の活発な誘致合戦も見られます。超円高を含む6重苦も課せられていますので、”ものづくり”の土台が揺らいでいるといっても過言ではないのです。現在、失業者数は356万人に上り、生活保護世帯数も過去最高を更新し、新卒の内定率も57.6%に下がっています。果たしてこの大量の失業、海外企業のM&Aやサービス業での吸収で、解決するのでしょうか。

 ニューヨークを始め、世界各地で失業者によるデモが起きているようですが、その原因の一つに、製造業の流出による先進国の中間層の崩壊が指摘されています。どの国も、失業問題は深刻であり、連鎖的雇用創出をもたらす製造業に対する再評価も始まっています。日本国政府が、意図的に6重苦を放置し、産業空洞化政策を推し進めているとしますと、それは、周回遅れの愚策であると思うのです。

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コメント (9)
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