万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「アラブの春」支援反対で氷は溶けるのか

2011年10月06日 17時23分54秒 | 国際政治
国連安保理、「アラブの春」支援の道閉ざす(読売新聞) - goo ニュース
 2011年は、アラブ諸国の国民が、自らの手で民主主義をつかみ取ったという意味において、重大な転換点となりました。早急にはイスラム諸国で民主化は起きない、との見方が大半であっただけに、”アラブの春”は、今なお非民主的な体制に苦しむ諸国の国民に希望と勇気を与える朗報となったのです。

 ところが、先日4日に開催された国連安保理では、ロシアと中国が「アラブの春」支援策に対して拒否権を発動し、インド、ブラジル、南アフリカといった新興国も反対に回ったため、決議案が廃案となったそうです。反対した政府の国民は、この政府の態度に対して、どのように感じるのでしょうか。「内政不干渉の原則」に反することが反対理由とのことですので、この原則を盾として、政府は、国民弾圧を平然と行うかもしれません。特に中国は、現在でも、陰に日向に民主化勢力を抑圧しています。国民は、内政不干渉の原則を強調する政府の態度に、国民弾圧の影を読み取るかもしれないのです。

 それはまた、政府にとりましても、両刃の剣であることを意味しています。何故ならば、国民の多くが、自らの政府を非民主勢力の一員と見なし、反政府感情、あるいは、民主化要求を高める契機となり得るからです。「アラブの春」支援への反対表明は、結果として、自らを閉じ込めている氷を溶かすことになるかもしれないと思うのです。

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