万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

非嫡出子相続差別判決―扶養義務は平等なのか

2011年10月04日 15時18分17秒 | その他
非嫡出子の相続差別は違憲…大阪高裁で確定(読売新聞) - goo ニュース
 大阪高等裁判所は、8月24日の判決で、非嫡出子の相続分を嫡出子の半分とするのは憲法に違反する、との判断を示したそうです。「確定」とは言っても、最終的な違憲立法審査権を有する最高裁判所(憲法第81条)に上告しなかった、ということなのでしょうが、この問題、国民全員に関わるのですから、裁判官が決めることではなく、国民的な議論を要するのではないかと思うのです。

 大阪高裁の判決では、法の前の平等に反することを理由として挙げたそうですが、この点について、幾つかの疑問点があります。例えば、民法の第877条は、扶養義務者として、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」と記しています。この条文に述べる”直系血族”には、非嫡出子も含まれているのでしょうか。もし、含まれているとすると、嫡出・非嫡出に拘わらず、老後の親を扶養する義務を、子は平等に負うことになりますが、そうではない場合には、非嫡出子は、相続の権利だけが認められることになります。また、この条文を非嫡出子を含めて解釈しますと、片親の違う兄弟姉妹の間でも、扶養義務が生じます。親に非嫡出子のある子、あるいは、非嫡出子は、一つの家庭で育ったわけではない兄弟姉妹との間に、法的な相互義務関係が発生するのです。相続は権利の側面ですが、義務の側面をも考慮しませんと、権利と義務の関係がバランスせず、不公平が生じます。

 この問題には、こうした義務の議論の他にも、家族制度の維持など、様々な角度からの問題点があります。民法の家族法改正は、私的な領域の問題なのですから、国民に問うこともなく、裁判官が、主観的に”家族観が変化した”と断定して違憲判決を行うことは、民主主義の原則からも逸脱していると思うのです。

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