万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

TPP協定交渉―試案提示方式にしては

2011年10月31日 16時09分47秒 | 国際経済
TPP、44道府県議会が消極的 意見書で反対・慎重(朝日新聞) - goo ニュース
 最近のブログ記事を読んでいますと、TPPの話題が頓に増えてきており、アメリカによる通商ルールの押し付けとして反対する意見も少なくありません。反米運動とリンケージしそうな勢いですが、幾つかの誤解もあるのではないかと思うのです。

 第1に、TPPの締結に際して、アメリカ議会の承認を要することを以って、日本国が、属国になるとする意見があります。アメリカ憲法では、条約や協定の締結には、議会上院の承認手続きを要しますので(第1条8節3項)、議会承認は、国内手続きの一環に過ぎません。日本国でも、条約の締結には国会の承認を要します(憲法第62条)。

 第2に、交渉に参加した以上、アメリカが、交渉からの離脱を許さないとする意見があります。しかしながら、交渉とは、当事者が条件や要望を出し合い、妥協点や合意点を見出す作業ですので、折り合いがつかない場合には、合意そのものが成立しません。おそらく、アメリカ側は、日本側が軽い”ひやかし”のように交渉参加してくることを牽制するために、こうした発言をしたとも考えられます。

 TPPに対して日本側が疑心暗鬼に陥るのも、実のところ、試案、あるいは、草案が公表されていないからではないかと思うのです(試案作成には、提唱国であるアメリカが作成する、参加国の代表による草案作成委員会がつくる、参加国の一国に委任する、全ての国に提出権を認める…といった方法がある)。たたき台があれば、参加各国は、具体的な点について、国内で議論を行うことができますし、交渉の場でも、つめた議論を行うことができます。通商政策とは、経済ならびに国民生活に直接に影響を与えますので、通商協定の締結は、よりオープンな形式のほうが望ましいのではないでしょうか。

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