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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

尖閣諸島―中国の”後出し棚上げ合意論”の落とし穴

2012年10月11日 15時51分43秒 | 日本政治
尖閣、60年の中国発行地図に「魚釣島」…外相(読売新聞) - goo ニュース
 中国側は、尖閣諸島について、日中国交正常化交渉の過程において、日本側との間に”棚上げ”の合意があったと主張しています。しかしながら、この後出しの”棚上げ論”こそ、中国の主張の弱さを示しているのではないでしょうか。

 60年代末に、国連の報告書により、尖閣諸島周辺海域に石油資源が埋蔵されている可能性が指摘されますと、1971年12月に、中国政府は、日本国政府に向けて、尖閣諸島は中国領とする声明を発表します。この声明文の公表は、丁度、日中間で国境正常化交渉が進められていた時期に当たりますが、田中・周会談で周氏は”今回は話したくない。今、これを話すのはよくない”とはぐらかしています。1978年の日中平和友好条約の締結に際しては、来日した小平氏は、記者クラブにおいて一方的な棚上げ論を打ち上げています。何れも、公式の合意ではありませんので、日本国政府は、”棚上げ合意”の存在は認めていません。ところで、この”棚上げ合意”をめぐっては、日本国政府がこれを認めると、中国の主張に一定の正当性を認めたかのように議論されていますが、平和友好条約の締結に際して、この問題を正面から取り扱わなかった態度が、逆に、自国による領有の正当性を揺るがしているとも考えられます。仮に、中国側が、尖閣諸島を歴史的並びに法的に、まぎれもない自国領であると認識していたならば、むしろ、日本国側に対して、平和友好条約の交渉の議題に積極的に載せるように要求し、その返還を主張したはずだからです。現在、北方領土問題がネックとなって、日ロ間では未だに平和条約が締結されていませんが、中国側が、尖閣諸島を日本国による”占領地”として見なしているならば、話題にも挙げないことは許されなかったはずなのです(日韓基本関係条約時のように、交渉の議題となった上で、両国合意の上で”棚上げ(日本側としては交換公文による調停による解決で合意したつもり…)”としたわけでもない…)。

 後になって、”棚上げ合意”を日本国側に強引に認めさせようとする態度から、日本国から尖閣諸島を奪うための取っ掛かりを作りたい中国側の意図が読み取れます。しかしながら、反対に、国交正常化交渉や平和友好条約の締結に際して、何故、尖閣諸島問題をはぐらかそうとしたのか、と問われた時に、中国は、その返答に窮することになるのではないでしょうか。

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