万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

再生エネ法固定価格買取制度―”悪魔の見える手”か

2012年10月02日 15時09分01秒 | 国際経済
環境税 10月から導入 家計負担増、年1228円(産経新聞) - goo ニュース
 7月1日から再生エネ法に基づく固定価格買い取り制度が始まったことで、電気料金の値上がり傾向は、さらに加速しそうです。制度的欠陥が再三指摘されながら、政府が見切り発車した”つけ”は、全て産業と国民に回ってくるのですから、暗澹たる気持ちになります。

 ところで、自由主義経済学派の祖とされるアダム・スミスは、”神の見えざる手(invisible hand of God)”という言葉を残しています。この言葉で、スミスは、個々人の自由な経済的利益の追求が、自然に人々の生活を豊かにしてゆく経済のメカニズムを、端的に表現しました。自由主義学派が、多くの人々を惹きつけてきた理由も、利己的行為とも見なされがちな経済活動が、実は、公共の福利の増大を導き、人々に恩恵をもたらす仕組みの妙にあります。実際に、この言葉の通り、統制経済や計画経済を採用した諸国よりも、自由主義経済諸国の方が、国民の生活レベルが格段に向上したのですから、スミスの洞察力には感服せざるを得ません。一方、この視点から、再生エネ法を見てみますと、どうでしょうか。再生エネ法による固定価格買い取り制度とは、まさに、政府が一方的に価格を固定化するのですから、自由主義とは反対の統制経済そのものの手法です。しかも、価格を統制することで、国民に安価な電力を提供するわけでもありません。特に、メガソーラなど、法外な高値が設定された太陽光発電の普及が進みますと、国民の生活レベルは、電力料金の上昇によるマイナス影響を受けて低下を余儀なくされます。つまり、たとえ、再生エネの普及という一見、”公共の福利”に叶う目的が掲げられつつも、統制型制度の下における事業者の利益追求は、自然に、人々の生活を貧しくしてゆくのです。

 この国民貧困化メカニズムは、”神の見えざる手”とは真逆の、”悪魔の見える手(visible hand of Satan)”と呼んでもよいのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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