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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

竹島文書の開示命令の吉凶

2012年10月12日 11時11分18秒 | アジア
 昨日、東京地裁は、日本国政府に対し、1951年から65年まで、つまり、サンフランシスコ講和条約から日韓基本関係条約の締結までの期間における、日韓両政府の国交正常化交渉に関する文書を開示するよう命じました。この文書、竹島問題や”慰安婦問題”と関連するだけに、各方面から注目が集まっています。

 この開示命令については、情報が錯綜しており、判然としないところがあります。ネット上の未確認情報によりますと、日本国政府が、開示拒否について、”竹島問題に関して韓国との交渉に不利になる”と説明したとの報道があり、2005年に韓国政府が開示した文書では、竹島周辺の海域について、日本国政府が、韓国側の”保護海域”として認めているとの説もあります。また、1965年1月に、両国が、”自国の領土と主張することを互いに黙認し合う密約”があったとされています。全面開示を求めるこの訴訟の原告には、左翼の歴史研究者や韓国人が含まれていますので、文書の内容は、日本国側に不利であると見なされているようなのですが、そうとばかりも言えないと思うのです。未確認情報が事実であったとしても、先日問題となった”防空識別圏”と同様に”保護海域”とは、国際法上に認められたものではなく、実質的には、国連海洋法条約の成立によって消滅している可能性があります。また、韓国側に有利に締結された日韓基本関係条約の背景には、竹島周辺で海域における韓国側の日本人漁船拘留と殺害の脅しがあったとされていますが、その真相も明らかとなることでしょう。つまり、韓国側の人質を取った上での条約交渉は、本来、国際法違反なのです。さらに、もし、密約の存在が明らかとなったとしますと、韓国側は、領土問題として竹島問題を認めていたことになり、ICJへの共同提訴拒否の理由を失います。

 このように考えますと、竹島文書の開示は、必ずしも韓国側有利には働かくとは限りません。日本国政府は、むしろ、日韓国交正常化交渉の過程における韓国側の交渉背景や竹島問題の未解決合意を明らかにすることで、韓国側に対して、ICJへの応訴を迫るべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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