万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

温家宝首相の蓄財疑惑―堕ちた偶像の行方

2012年10月28日 15時36分01秒 | アジア
温家宝首相の親族が27億ドル蓄財…米紙報道(読売新聞) - goo ニュース
 中国の共産党一党独裁体制が、凄まじい利権マシーンと化していることは、以前から、何度となく指摘されてきました。それでもなお、胡体制が曲がりなりにも維持できたのは、温家宝首相の清廉潔白なイメージが国民の信頼を繋ぎとめてきたからかもしれません。

 中国における伝統的な政治手法として、指導者達が、”強面役”と”宥め役”に役割分担し、国民を”あめとムチ”で巧みにコントロールするという両面作戦があるそうです。毛沢東と周恩来の組み合わせは、まさにこの典型例であり、厳格で威厳に満ちた毛沢東と慈悲深く温厚な周恩来の二人三脚によって、中国共産党は、革命期を乗り切り、長期政権化に成功しました。しかしながら、所詮は、両者結託の上での茶番ですので、どちらかのイメージが剥がされてしまった時点で、その効果は霧散してしまいます。胡錦濤主席と温家宝氏のコンビにおいても、一方の偶像の崩壊は、現体制の基盤が根底から揺るがす危機となるはずなのです。しかしながら、胡主席の院政化が事実であれば、この騒動は、習近平氏を主席とする次期体制への移行に伴うステップなのかもしれません。温家宝氏は、蓄財に関する情報がリークされることで、胡氏と習氏の両者から、新たな体制には邪魔な存在として、切られてしまったのかもしれないのです。そしてそれは、来たるべき胡・習体制の成立が、”宥め役”なき時代の到来となることを意味しているのです。

 中国の次期政権が、”強面役”で占められるとしますと、日本国を始め、周辺諸国との緊張が高まることは必至となります。そして、中国国内では、ムチだけの政策が国民に振り下ろされるとしますと、国民の不満は、体制批判に向かうことも十分に予測されるのです。温家宝氏のイメージ失墜は、中国の一党独裁体制崩壊への序曲となるかもしれないと思うのです。

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コメント (2)
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