万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

政治の手足となる中国の警察―暴動激化の要因

2012年11月04日 15時27分32秒 | アジア
反日デモの真相は…中国記者、ブログでコツコツ(読売新聞) - goo ニュース
 9月に発生した大規模な反日デモは、中国の警察が、政治の手足に過ぎないことを露呈したようです。政治からの指令がなければ動けない警察。中国の治安の悪化と権力の腐敗は、極度な政治優位の集権体制にも求めることができそうです。

 1949年の建国以来、一党独裁体制を堅持してきた中国では、共産党を人民の代表とするフィクションの下で、権力分立を頑なに拒否してきました。経済分野では改革開放路線に舵を切った小平氏でさえ、政治制度における権力分立だけは絶対に許さないと断言していたと伝わります。権力の分立とは、共産党の指導者にとりましては、権力独占に対する重大な脅威であり、独占状態の終焉は、革命で手にした権力の放棄に他ならないと理解したのでしょう。その一方で、国家の役割を考えますと、権力が独占されている状態では、充分にその機能を果すことは難しくなります。特に、中立・公平性が求められる治安の維持には、警察組織の独立が不可欠であり、常に、政治に従属、あるいは、政治介入を受けていたのでは、犯罪を取り締まることはできません。暴力沙汰が発生しても、政治機関が容認すれば野放しとなり、容易に暴動へと激化してしまうのです。西安の反日暴動では、中核となって煽ったのは3、4人に過ぎないにも拘わらず、警察は、政治家らの指令待ちで傍観しいたそうです。しかも、中国の場合、指令を出す上位の政治機関は、共産党なのか、国家機関なのか、その区別が曖昧であり、警察は、どちらの手足になり得ます。かくして、国民は、この体制の犠牲者となり、本来、国民の生命、身体、財産を護るはずの警察に対しても、常に警戒しなければならなくなるのです。

 日本国でも、大津虐め事件や尼崎事件といった、度を越した凶悪犯罪や凄惨な事件では、警察の初動体制に問題があったする指摘もあります。民主的な国家にあっても、警察が動けない事件、あるいは、警察の目に触れないように隠蔽されていた事件ほど、抑制が効きかず、暴力がエスカレートする傾向があるのです。況してや、中国では、政治と警察が結びついています。指導者の権力の独占欲のために、国民の多くが犠牲になる中国の現体制が、今後とも永続してゆくとは思えないのです。

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コメント (4)
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