万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

TPPの隠れた論点―決定手続きの問題

2012年11月19日 15時54分53秒 | 国際経済
TPP交渉へ参加意思表明 タイ首相、米との首脳会談(朝日新聞) - goo ニュース
 日本国内でも賛否が分かれるTPP問題。タイを訪問中のオバマ大統領との会談で、インラック首相も、TPP参加に前向きな姿勢を示したと報じられています。

 TPPへの参加を希望する国は、タイが加わるとさらに数が増えるのですが、複数の国が集まって経済圏を形成するとなりますと、協定の内容に加えて、もう一つ、隠れた重要な論点があると思うのです。爆弾発言になるかもしれませんが、それは、TPP条約の内容を決定するに際して、どのような手続きで決めるのか、という決定手続きの問題です。実は、この問題、最も根本的な問題なのではないかと思うのです。TPPに対する批判の多くは、”アメリカ押しつけ論”にあり、協定の内容も、最初からアメリカ有利に出来ているというものです。つまり、TPP反対論の核心は、他の参加国が、アメリカの要求を一方的に飲むという構図にあるのです。そこで、TPPが、より公平な機構であることを示すためには、決定の手続きを明確にするとともに、透明化する必要があるのではないかと思うのです(現状では、アメリカ一国のみが拒否権を持つ?)。決定に際しては、全会一致制を採るのか、多数決制を採るのか(一国一票?)、オプト・アウト(部分的不参加)を認めるのか、交渉途中の加盟断念を認めるのか、それとも、論点や項目ごとに手続きを変えるのか…、といったことは、予め合意を形成しておいたに越したことはありません。決定に関する手続きを決めてから交渉に入りませんと、交渉参加に二の足を踏む国が現れるか、交渉しても議論が紛糾して何も決まらないか、決定されても、一部の参加国に不満が残る結果となる…のではないかと思うのです。

 条約の内容を固めるに際しては、全ての加盟予定国が参加して、議論を尽くす必要がありますが、その前に、決定手続きの問題は、解決しておくべきことかもしれません。とは言うものの、”決定手続きの合意”もまた簡単なことではありませんので、アメリカ、あるいは、他の何れかの国に、中立・公平な立場から、纏め役を引き受けてもらうという方法もあります。TPPが、21世紀に相応しい、共存共栄を実現する地域経済圏となるためには、決定手続きもまた、全ての参加国が納得するものであるべきと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする