万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

安倍自民総裁の金融緩和策―円安による輸出回復が鍵

2012年11月27日 15時49分37秒 | 国際経済
為替変動、「量的緩和が原因」=貿易への打撃で米批判―中国(時事通信) - goo ニュース
 長引くデフレと円安が、日本経済を苦境に陥れた原因として、安倍自民党総裁は、金融緩和策を打ち出しました。この政策方針に対しては、白川日銀総裁をはじめ、副作用を根拠として難色が示されてもいますが、金融緩和の成否は、円安による輸出回復が鍵を握っているのではないかと思うのです。

 WTOの会合で、ブラジルが中国の輸出志向の元安為替政策を批判したことに対して、中国側は、為替の変動は、アメリカの金融緩和が原因であると反論したそうです。この反論は、ブラジルに対しては全く説得力がないのですが、ある国が、戦略的に為替操作を実行した場合、他の国に、防衛手段や対抗手段が認められないとなりますと、一方的に輸出において不利な状況に置かれます(片方にだけ攻撃の権利を与え、他方には防衛の権利さえ認めないようなもの…)。レアル高に苦しむブラジルの提案も、”対抗措置を認めよ”というものなそうです(対外通貨政策についてのルール造りは、今後の重要な課題…)。どの国にとりましても、他国のアグレッシブな為替政策は、重大な危機なのです。この点を踏まえますと、日本国もまた、中国や韓国の自国通貨安政策によって貿易上、不利な立場に置かれていたのですから、為替操作に対して金融緩和等の対抗措置を採ることは、防御手段として当然に認められるべきものです(金融政策の他にも、中国製品に高率関税といった方法もありますが…)。金融緩和には、インフレといった副作用が伴いますが、日本国の場合は、円安によって輸出が回復しますと、企業の為替欠損が緩和されると共に、産業が活気づくことが期待できます。設備投資や研究・技術開発への投資が増加し、海外での売上増加が所得の上昇…に向かうとしますと、国内消費も伸び、雇用状況も改善されるかもしれません(悪性のインフレやスタグフレーションにはならない…)。

 為替市場における円安に反応するかのように、株式市場では、輸出関連株の上昇が目立っているそうですので、市場もまた、日本企業の輸出回復を予測しているのでしょう。国内物価の安定を根拠とした中央銀行の独立性は、外国政府による戦略的な為替操作や金融緩和に対しては無力なのですから、危機からの脱却には、政治的な判断を要するのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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