万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国共産党大会―権力演出装置の限界は来るのか

2012年11月09日 11時01分30秒 | アジア
中国共産党大会 治安維持に140万人 北京五輪の3倍(産経新聞) - goo ニュース
 今年は、5年に一度訪れる中国共産党大会開催の年に当たり、北京には、張りつめた空気が漂っているそうです。治安維持に140人もの警官が動員されているそうですが、今年の緊張感は、例年とは、いささか違うものとなるかもしれません。

 中国の政治的イベントには、建国以来踏襲されてきた共産主義特有の演出方法があります。会場全体は、暗めの赤色を基調に配色し(画像をよく見ると、赤い花が随所に飾られ、ネクタイまで赤色が多い…)、前面のステージには、党の指導者達がひな壇状に着席し、一般党員席と対面する構図に配置されています。ステージの指導者席の前列中央に座る指導者=総書記こそが、共産党のヒエラルヒーのトップであり、否が応でも、党員達の視線が集まるのです。今回の党大会では、中央の胡主席の隣に、江沢民全国家主席が陣取っていたのは、集団指導体制をアピールするためであったのかもしれません(あるいは、責任を分散したい?)。独特な権力空間の雰囲気を醸し出す演出は、おそらく、指導者達に権力の座にあることを自覚させ、麻薬のように権力に酔さるために考案されたのでしょう。壇上の席に座っている指導者達は、党員達、そしてその後ろにいる人民達を前に、共産党一党独裁体制の維持を心の中で誓ったかもしれません。”この体制は、何としても維持されなければならない”と。

 しかしながら、著しい経済成長を達成したものの、所得格差が深刻となり、国民の体制に対する不満が強まっている今日にあって、中国共産党の権力演出装置としての党大会は、これまで通り、国民が仰ぎ見る権力の象徴としては機能しなくなるかもしれません。逆に、傲慢な一党独裁体制の象徴と見なされ、国民の怨嗟の的となる可能性も否定できないのです。北京に敷かれている厳重警戒体制は、その兆候を示してもいます。党大会では、さらなる成長が連呼されていたそうですが、党大会の演出さえ旧態依然のままであり、自らを変えることができない共産党こそ、国家としての成長を妨げる最大の阻害要因ではないかと思うのです。

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コメント (4)
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