万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

生活保護はゼロ・サム問題である―削減反対論者の死角

2012年11月30日 11時03分21秒 | 日本政治
私たちの雇用はどうなる?生活保護制度の行方は? 拡大する貧困問題解決に向けた各党の公約を徹底検証(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 生活保護をめぐっては、不正受給、貧困ビジネス、医療制度の悪用、最低賃金を上回る給付額など、様々な問題点が渦巻いています。このため、生活保護費の削減案も提起されるようになりましたが、削減案に対しては、生活保護受給者の消費減少による経済へのマイナス影響を根拠に、異論を唱える方もおられるようです。生活保護は、地域経済をも支えていると。

 しかしながら、この反論は、正しいのでしょうか。生活保護費の財源とは、言わずもがな、国民や企業などが納めた税金です。このことは、生活保護費の増加=他者の負担の増加、または、他の予算の削減を意味しています。つまり、生活保護の受給者と他の国民との間には、ゼロ・サム関係が成立しているのです。生活保護の予算の拡大は、増税や予算削減による他の国民の購買力の低下や公共投資の減少、すなわち、消費や需要の縮小を招くことになるのですから、経済への影響としては、生活保護の削減だけが特別にマイナス効果を生むわけではありません。しかも、生活保護者の受給者増加そのものは、雇用=納税者の減少を意味しますので、この傾向が続きますと、いわば、納税者よりも給付者の数が増えてゆく負のスパイラルに陥りますので(法人税も企業が赤字となれば減少)、財政はひっ迫し、生活保護制度の維持そのものが困難となります。もっとも、こうした危機的状態を避けるためには、国債を発行して生活保護費を工面するという方法もありますが(現在でも実際に行われている…)、生活保護は、収益性の全くない非生産的な分野ですので、利払いや償還が重く政府と国民にのしかかると共に、国債の信用不安に繋がれば、財政のみならず、金融にもダメージを与えることにもなりかねません。

 このように考えますと、生活保護問題の究極の解決策は、企業業績の回復による雇用の改善なのですが、生活保護費の削減反対を唱える人々に限って、原発の再稼働に反対であったり、円高容認であったりと、”反産業”の姿勢が強いのです。生活保護がゼロ・サム問題な以上、過度な生活保護擁護は、他者に負担を押し付け、経済破綻の道連れにするという意味において、モラルにも反します。反対論者の人々は、自己正当化に躍起になるよりも、他者の立場をも考慮した、より経済全体を見通した現実的な対応こそ真剣に考えるべきと思うのです。生活保護受給者も、納税者である国民や企業も、両者とも不幸になるのですから。

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コメント (2)
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