万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

TPP参加問題―全産業による利害調整を

2012年11月14日 15時48分18秒 | 国際経済
経団連会長、TPP反対の農協批判 「極めて勉強不足」(朝日新聞) - goo ニュース
 日本国は、TPPに参加すべきか、否か。この問題、実のところは、誰も、正確に成否を予測することはできない問題です。参加を表明している日本国以外の国も、TPPが自国にとって利益になるのか、確証は持てていないはずです。

 自由貿易化は、必ずしも、自国の利益になるとは限らず、EUにおける南欧諸国やNAFTAに参加したメキシコのように、期待されたほどには経済成長に繋がらない場合もあります。アメリカでさえ、国内では慎重論があるのです。TPPに参加すれば、自動的に経済的な繁栄が約束されるわけではないのですから、参加に際しては、どのような条件や状況であれば、自国の利益になるのか、まずは、見極める必要があります。その際には、利害が対立する全ての産業が、対応策を含めて議論すべきであり、直接的な当事者、すなわち、経団連、農協、医師会、自動車業界、金融・保険業界…が一堂に会して利害調整を行う場を設けることも一案です(政府は調整役…)。交渉条件の項目としては、(1)関税の例外措置(2)国内制度の保持(3)対外通貨政策の制限の有無(4)セーフガードの発動要件(5)脱退の手続き(6)移行期間(7)紛争解決制度…などを挙げることができます。参加国間に著しい経済格差がある場合には、例外なき関税撤廃の影響は、破壊的なレベルともなりかねませんし、適正なルール造りを伴わない自由化は、混乱の原因となりますので、他の参加国もまた、以上の項目については、関心を寄せるはずです。仮に、交渉参加の合意が成立した場合には、その後の交渉の中で、産業各界が妥協点をすり合わせることにもなりますが、対応措置を講じても、特定産業が壊滅に至ると全参加者が認識した場合には、参加を見送るという選択もあります。一方、一旦、加盟を決断したならば、全ての産業が、TPP体制での生き残りをかけて、全力で取り組むしかないのではないかと思うのです。

 TPPが政治課題化してから既に数年が経過しているにも拘わらず、新聞やネット上では活発な議論が闘われる一方で、信じがたいことに、政府は、国内の利害調整や合意形成に関しては、何もしていません。これでは、時間だけが無為に過ぎて行くだけです。政府が動かないのであるならば、最終的な参加の判断は別にしても、当事者である産業各界が、自発的に利害調整に向けて乗り出してはどうかと思うのです。

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コメント (2)
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