万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国は007の世界を凌ぐ魔界?

2012年11月08日 16時03分07秒 | 国際政治
ヘイウッド氏、実は007並みのスパイだった-薄氏情報を英秘密機関に提供(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版) - goo ニュース
 最近になり、中国を揺るがした簿煕来失脚事件の発端ともなった、簿氏夫人、谷開来氏によるイギリス人殺害事件について、”殺害された二ール・ヘイウッド氏はスパイだった”、とする説が報じられ、耳目を驚かせています。正確に言えば、MI6直属のスパイではなく、簿氏一族の内情を自発的に伝える情報提供者の立場であったようですが、この事件には、幾つかの謎や矛盾点などが残されているそうです。

 ヘイウッド氏は、既にビジネスや報酬をめぐり関係が悪化していた簿氏の家族の呼び出しに応じ、赴いた先の重慶で殺害されました。この動きは、MI6も把握していたようなのですが、ヘイウッド氏が、いそいそと簿氏の家族の元に向かったとしますと、007にしては、不用心過ぎます。中国では、政府高官の私的情報は国家機密とされていますので、MI6への情報提供が重罪に当たることは、ヘイウッド氏も承知していたことでしょう。中国公安にも察知されていた可能性もあるのですから、簿氏一族にとっても、ヘイウッド氏にとっても、重慶での面会は危険な行動であったはずなのです。そして、万が一、事件の発覚を恐れた谷氏が口封じのためにヘイウッド氏の殺害を計画していたとしたら、ヘイウッド氏の事件は、闇に葬られた可能性もありました。実際に、王立軍氏の米国領事館亡命未遂事件が起きなければ、ヘイウッド氏の事件は、”過剰なアルコール摂取”による事故として処理された可能性が高いのです(ヘイウッド氏は、自らの命が危ないと感じなかったのでしょうか…)。簿氏失脚の背景には、成都軍の存在があり、この分離的な動きを先制したともされていますが、権力闘争とそれに伴う陰謀が渦となり、政府高官に関わる事件が、個人の問題に収まらないところが、中国の怖さでもあります。

 ヘイウッド氏は、自らの愛車のジャガーに、007というナンバープレートを付けて颯爽と北京をドライブしていたそうです。しかしながら、中国という国は、氏の想像を越えた、007の世界を遥かに凌ぐ別世界=魔界であったのかもしません。

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コメント (2)
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